古くからの呼び名が残る土地のだるま市

阿豆佐味天神社だるま市  立川市

開催時期:1月1日   エリア:東京都立川市

 立川市砂川町。砂川という地名は市内を流れる残堀川がかつて、“砂”と“石”がむき出しの「砂の川」であったことからきていると言われています。

住所は1丁目、2丁目ですが、バス停や多摩モノレールの駅には砂川一番、砂川二番という表示が見られます。この呼び名は組という地域の集まりからきていて、各組ごとに道や水を管理し、行事の取り仕切りなどを行っていたそうです。また年貢を徴収する際にも、この組を用いていたそうです。

 そんな地に多くの人々が生活するようになり、心のよりどころとしてお寺や神社の新設が望まれました。そして砂川三番に流泉寺が建立され、砂川四番には縁のあった殿ヶ谷村から1629(寛永6)年に阿豆佐味天神社が勧請されました。

         

 阿豆佐味天神社のご祭神は薬の神として名高い少彦名命と文学や芸術の神である天児屋根命です。また境内には立川水天宮も祀られていて、安産や子育ての守り神として参拝客を迎えています。

だるま商とのやりとりが楽しく活気に溢れています
元日の朝。冬空に映える鳥居がなんとも美しい
最寄りのバス停となる砂川四番。町内は十番まで割り振られています

 立川駅からバスで約15分。砂川四番バス停の目の前に鎮座するのが阿豆佐味天神社です。この神社は元日にだるま市が立ち地元の人たちが初詣に訪れる、地域に根差した神社です。

 縁起物のだるまに、お願い事をするときに片方の目を入れ、それがかなった時にもう片方の目を入れてお返しするのが一般的になっています。

 このだるまに目を入れる風習。これは江戸時代に疱瘡を恐れた民衆が大きな目のだるまを求めるようになり、その後自分で目を入れたいという客が増えたことから、自分で目を入れられるようにと広まっていったそうです。

  阿豆佐味天神社ではいつごろから、この市が立つようになったのでしょうか。社務所の方に聞くと、「昔は農家が農閑期の副業でだるまを作っていたので、お正月にそれを神社で売ったのが始まりでは?」と話してくれました。具体的な年代は分からないそうです。

 だるま屋さんの前で値段を聞いたり、1つ1つ異なるだるまの顔を見比べて会話が生まれたりと、赤いだるまと笑顔が行き交うのが元日の恒例の風景なのです。

 多摩地域には他にも、各地で賑わいを見せるだるま市が開かれています。そちらにもぜひおでかけください。

境内では、願い事を叶え役目を終えただるまのお焚き上げも行われています
堂々とした社殿にも、だるまが祀られています
水天宮前で安産祈願の犬が見守る

写真提供:茂垣貴子

●DATA
[データ]
開催時期/例年1月1日
住所/東京都立川市砂川町4-1-1
ホームページ/ https://azusami-suitengu.net/
アクセス/JR立川駅より立川バス「三ツ藤」、「箱根ヶ崎駅」行きで「砂川四番」下車、または西武拝島線武蔵砂川駅より徒歩12分