新年の飾りに用いられる門松。一般的に松が使われますが府中市では松を使わない習慣が伝わっています。旧家では現在も笹竹を飾っている様子が見受けられ、武蔵府中郷土かるたにも「ま=松を立てない正月飾り」と読まれています。これは大國魂神社の七不思議の一つ「境内に松の木なし」に由来します。
昔々大国様と八幡様が散歩に出かけた時のこと。暗くなってもその日の宿が見つからず八幡様が宿を探してくるから待っていて、とその場を去ってしまいました。戻ってこない八幡様に待ちぼうけを受けた大国様は「まつはつらい」とおっしゃって、大國魂神社では「待つ」を「松」に例えて松を嫌うようになりました。境内には松は一本もなく、植えても育たないとも言われています。神様の時代の頃の出来事が現代にも受け継がれているとは、長い歴史を持つ府中市ならではです。
大國魂神社には他にも鳥が社殿には糞をしない、大銀杏の根元に生息する蜷貝を煎じて飲むとお乳の出が良くなる、などいくつかの不思議が伝わっています。不思議をたどりながら参拝するのも楽しいかもしれません。
新年を迎える前の11月の酉の日は「おおとり」という名前の神社の例祭で、各地の神社では縁起物の熊手を売る店が出て賑わいます。
大國魂神社の拝殿西側には大鷲神社が鎮座しています。普段は静かに佇む社殿ですが酉の日にはたくさんのお供え物が備えられ、灯りが灯って特別な日を感じさせます。
大國魂神社の参道に目をやるとその両脇に4軒の熊手商が店を出し、手のひらに乗る小さなものから担いで持つような大きなものまで大小の熊手を並べて人々を迎えます。熊手にはおたふく、米俵、鯛、大国様に恵比寿様とおめでたいものがたくさんあしらわれます。求めると最後に稲穂をつけて手渡してくれます。
毎年決まったお店で買う人もいれば、お店の人とやりとりをしながらどれにしようか悩む人などさまざま。交渉が成立すると拍子木と手拍子で手締めをし、「良いお年を」の挨拶で別れます。
大國魂神社の熊手市は店によって異なりますが、おおよそ午前9時から午後9時まで開いています。また大鷲神社でも熊手が頒布されます。
写真提供:茂垣貴子
●DATA
[データ]
開催時期/例年11月の酉の日
住所/東京都府中市宮町3-1
ホームページ/ https://www.ookunitamajinja.or.jp/
アクセス/京王線府中駅より徒歩5分、JR武蔵野線・南武線府中本町駅より徒歩5分