【多摩全域】江戸東京野菜を知ってますか?多摩の伝統野菜を訪ねて

【多摩全域】江戸東京野菜を知ってますか?多摩の伝統野菜を訪ねて
知って、食べて、多摩の伝統野菜を応援しよう!

加茂なす、九条ねぎ、聖護院かぶという名前は聞いたことがありますか? スーパーにも普通に並ぶこともあるこれらの野菜は伝統野菜と呼ばれ、その地域の古来種野菜として積極的に保護されています。それと同じように、東京にも「江戸東京野菜」と呼ばれる伝統野菜があります。

 

では、「江戸東京野菜」とは何かというと、江戸時代に参勤交代などで地方から持ち込まれた種から、現在の東京の風土に合い生き残った品種や、改良されて根付いた品種、元々あった品種などが育ち、今でも伝統的に東京で栽培されている独自の固定種の野菜をこの呼称で呼ぶようになりました。

 

さらに、江戸と呼ばれていた現在の東京23区あたりは耕作地が少なく、街の開発が進むにつれ、伝統野菜は比較的収量が少なく、病気にもなりやすいこともあり、栽培に非常に手間がかかるため、生産を維持することが困難だと考えられていました。

 

そこで、明治26年に、神奈川県から三多摩地域が東京府に移管されたことをきっかけに、今では、小笠原諸島や八丈島を含む広く東京で江戸時代から栽培される伝統野菜・「江戸東京野菜」が確立しました。

 

「江戸東京野菜」は、現在52種類が認定されています。その内、多摩地域で栽培されているのは15種類です。皆さんは、いくつご存知でしょうか?

 

・東京ウド(吉祥寺で栽培が始まり、現在は北多摩エリアに広がる)

・三鷹大沢ワサビ(三鷹市の古民家保全地域で栽培されている)

・奥多摩ワサビ

・ノラボウ菜(古文書では、五日市村を含めた周辺12の村々で栽培が始まる)

・東光寺ダイコン(浅川の清流で育つ)

・ミツバ(町田市小山田ミツバ)

・白岩(しらや)ウリ(檜原村福治ら地区の白岩地区で栽培)

・小金井マクワ(小金井市の農家から採れたマクワウリ。その前は武蔵国府中で栽培)

・府中御用ウリ(江戸幕府への上納品として栽培されていたマクワウリ)

・高倉ダイコン(大正10年頃から栽培が始まり他品種との自然交配でできた品種)

・八王子ショウガ(昭和初期から八王子市加住町で始まる)

・川口エンドウ(八王子市川口地区で栽培されて特産化される)

・拝島ネギ(昭和初期に水戸からもたらされて栽培が続く)

・おいねのつる芋(檜原村の「おいねさん」が作り始めたジャガイモ)

・治助(じすけ)イモ®(檜原村から持ち帰った種イモで奥多摩に広がる)

 

今回、その貴重な多摩地域の「江戸東京野菜」を育てる農家の石川敏之さんの畑にお邪魔して、お話を伺いました。

畑の入り口の看板と一緒の石川さん。語り口もやさしい

武蔵五日市線武藏増戸駅からほど近い住宅地の中に、「ゆっくり農縁」はあります。江戸東京野菜を中心に、その他の伝統野菜や固定種の野菜を自然栽培で育てている数少ない農家さんのひとりです。

 

神奈川県川崎生まれで、早くから食品や環境への関心を持っていましたが、転機が訪れたのは50代の頃だったそうです。映画を観たことをきっかけにF1種や固定種といった種のことを知り、江戸東京野菜コンシェルジュなどの資格を取り、畑をしながら土に触れ、土壌微生物がどれほど私たちの生活を支えているかなど、自然や生き方を考える農講座の受講、ブータンや海外への旅、文化人類学者との出会いなど、様々な経験が自然と、自分でも自然農で野菜を作ることに繋がっていきました。

 

石川さんの畑は、決して大きくはなく、農業をやっているというにはこじんまりとしています。でも、そこには、野菜が生き生きと育っています。年間100種類ほどの野菜を作っているそうで、そのほとんどが、スーパーマーケットや八百屋さんの店先であまり見ることのない江戸東京野菜やその他の伝統野菜です。収穫が終わると、種取り用に残した野菜からこぼれた種をまた育て、命を繋いでいっています。

 

自然栽培なので、肥料や農薬はもちろん使わないので、道端でもよく見かけるような植物が、野菜よりも多くの面積を占めているのではないかと思うくらいびっしり育っていたり、稲わらを敷いたり、収獲しなかった野菜をそのままにして土を乾燥から守り、地温を保ち、土壌中の微生物が生きやすい環境をつくっています。なんと、畑は耕さないそうです。

少量多品種の畑。太陽の位置に合わせた畝の向きも試行錯誤中

八丈オクラ。これから種採り作業

細く伸びているのがニンニク。雑草もそのまま

畑にお邪魔した時に、冬野菜がもう終わりかけでしたが沢山いただいて帰りました。大根に見えるのはかぶです。向かって右が東京長かぶ、左が日野菜かぶ。輪切りにしてオリーブオイルで焼いて、塩ありと無しで頂いてみました。普通のかぶよりも中身がぎゅっと詰まっているようで食感がしっかりしていて、甘みが強く、食べ応えがありました。大根ともかぶとも少し違う、新鮮な驚きです。

分けて頂いた伝統野菜をカゴ盛り

石川さんは、自分で畑をやり、野菜を育てるということを中心に置いて、まだまだ知られていない江戸東京野菜や伝統野菜を広めていく活動をしながら、同時に、食のこと、考えること、繋がることを伝えるために、情報発信やイベントの企画などにも力を注いでいます。

 

そのひとつが、育てた江戸東京野菜を飲食店でメニューに使ってもらうこと。今回、そんなお店のひとつ・ひのはらイタリアン「ヴィッラ・デルピーノ」でランチを頂きました。

払沢の滝入口にある知る人ぞ知るイタリアンレストラン

石川さんの野菜が使われている豆と野菜とパンの煮込み

知ってもらって、食べてもらうにはどうしたらいいのかを常に考え、活動している石川さん。

なかなか私たち一般消費者の目に触れることがないのですが、東京にも伝統野菜があり、多摩地域にも、多摩地域ならではのストーリーを持った伝統野菜があります。江戸東京野菜の栽培農家さんや、それを食材として使うレストラン、販売する小売店、応援する人々がいて、繋いでいっている今の環境ですが、もし、どこかで江戸東京野菜を見かけたら、伝統野菜を残していこうと日々活動するそんな人たちのことを思い出して、買って、実際に味わってみてください。

 

●●●DATA

ゆっくり農縁

所在地/東京都あきる野市上ノ台58-2

Facebook/https://www.facebook.com/slownouen

問合わせ先/shiraz.toshi.96@icloud.com

*江戸東京野菜について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

江戸東京野菜通信/http://edoyasai.sblo.jp/

NPO法人江戸東京野菜コンシェルジュ協会/https://www.tokyo-ja.or.jp/farm/edo/

 

2023/02/28

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