府中市は、古代武蔵国の国府の所在地として知られています。国府の中枢施設があった国衙跡は大國魂神社境内とその東側にあり、その一部は、国史跡武蔵国府跡に指定されています。
この武蔵府中熊野神社古墳は、甲州街道と新府中街道が交差する本宿交番前の交差点北西の少し奥まったところに位置。武蔵国衙跡の西方約2kmに所在する熊野神社本殿裏側の境内にあり、展示館も併設しています。
武蔵府中熊野神社古墳は、飛鳥時代の7世紀の中頃(今から約1,350年前)に築造された古墳です。四角い墳丘の上に丸い墳丘が重なった形で、上円下方墳(じょうえんかほうふん)と呼ばれています。この形は古墳時代の終わり頃に造られるようになった、全国的にも希少な形の古墳です。
この古墳は日本列島内の発掘調査により確認され、石が葺かれている上円下方墳の中では、最大規模であり、もっとも古いものです。
古墳は、三段構造で各段とも盛り土で築かれています。上から見た形は、1段目と2段目が正方形で3段目が円形。2段目と3段目は全面河原石で覆われています。
一段目の一辺の長さ32mは、上円部の直径16mの2倍。2段目の正方形の一辺の長さ23mは、上円部すっぽり収まる正方形の対角線とほぼ同じ長さに造られています。
被葬者は不明ですが、上円下方墳であることや全面が石で葺かれていること。さらに切石切り組みの三室構造の横穴式石室であることなどの特徴から、武蔵国内を代表する有力者の墓であると推定されています。
古墳の南側にある展示館では、1階ホールの大型ディスプレイで古墳の解説を放映。階段の壁面には、府中市の歴史を年表や写真で紹介しています。
2階では、古墳断面のはぎ取り土層を壁一面に展示しているほか、古墳の葺石・貼石・石室の石材などの実物資料や鞘尻金具のレプリカ、石室の入り口模型も展示しています。
さらに、古墳内部に造られた、石造りの埋葬施設「石室」の復元展示室もあります。手前から前室、後室、玄室の3室にわかれていて、前室、後室は方形ですが、奥の玄室は円形に近い形をしています。
玄室からは多数の釘、ガラス製の玉、大刀の鞘に付けられた鞘尻金具などが見つかっており、この部屋に古墳の主が埋葬されていたことがわかります。
こうした展示に触れ、幽玄な古墳の前に立つと府中の歴史の深遠さを感じざるを得ません。
是非みなさまもこの「武蔵府中熊野神社古墳」を訪れて古代のロマンを体感して下さい。
●●●DATA
国史跡武蔵府中熊野神社古墳展示館
所在地/〒183-0031 府中市西府町2丁目9番地(熊野神社境内)
営業時間/4月1日から10月31日 午前9時から午後5時
11月1日から3月31日 午前10時から午後4時
休日/月曜日(祝日・振替休日に当たる場合は直後の平日)
年末年始(12月29日~1月3日)
電話番号/042-368-0320
URL/https://www.city.fuchu.tokyo.jp/shisetu/komyunite/gekijo/kumanokofun_tenjikan.html
入館料/無料
アクセス/JR南武線西府駅より徒歩8分、京王線府中駅から京王バス「西府町2丁目」「西府町3丁目」下車徒歩4分
2021/06/23