立川市の五日市街道沿いにある「蔵の花屋 コトハ」は、“蔵を改装した花屋”として注目を集め、2019年9月のオープン以降、多くの人で賑わう人気店です。なぜ蔵で花屋なのか? どんな花をラインアップしているのか? その人気の理由を確かめてきました!
西武拝島線の武蔵砂川駅から徒歩約10分。五日市街道沿いを立川方面へ向かって歩いていると、緑の木々の合間に白い外観をした蔵が見えてきます。2019年9月にオープンした「蔵の花屋 コトハ」です。
建物は江戸時代後期に建てられた蔵ですが、オープン時に改装されているためとてもキレイです。梁や柱、瓦などは活かしつつ、壁面は新しく塗り直したと言います。古さと新しさが混合した独特な雰囲気があります。
店内へ一歩足を踏み入れると、外の雑音が消え、ジャズピアノのBGMが流れる落ち着いた空間が広がります。足元にも、壁にも、天井にも、すき間なく並べられた花々に見とれていると、「こんにちは」と、この土地で植木生産業を営む滝島さんと、店主の浅井さんが出迎えてくれました。
花に囲まれた店内で、おふたりに話を伺いました。
立川市出身の滝島さんは約36年間、この地で植木を育てる滝島園を家業としています。家業の傍ら鉢花の無人売店を行っていました。今後の無人売店について考えていたころ、浅井さんが来店してきたそうです。
滝島 浅井さんが「蔵を貸していただける場所を知りませんか?」と家に尋ねてきました。父が対応し、「蔵を貸すって他のところでも難しいのではないか」との話でした。そこにたまたま私が通りかかり、おもしろい話だと思い勢いで話を進めました。
浅井 ずっと都内の花屋に勤めていて。蔵の持つ雰囲気と花の相性が良いのでないかと思っていたんです。この蔵に出会ったとき、「ぜったいここだ!」とピンときました。
花の仕入れや配置はすべて浅井さんが担当します。店内にはバンクシアやピンクッションなど、一般的な花屋では見られない花も並んでいます。
どのような基準で花を選んで仕入れ、並べているのでしょうか。
浅井 お客様が見て「うわぁ」と感動したり、ワクワクしたりするような花。うちは常連のお客様が多いので、なるべく誰かのお気に入りになりそうな花選びをしています。
咲くまでの時間、満開の時、朽ちていく瞬間、季節の色など、ひとくちに花と言ってもさまざまな楽しみがあります。季節感の調整も花屋の仕事のひとつなので、飽きないお店づくりを心掛けています。
浅井さんは「蔵の花屋 コトハ」を開くにあたって、決めていたことがあるそう。それは、「このお店に行けば最適な花に出会える」と思ってもらえるお店にしたい、ということでした。
浅井 贈答用の花を求めるお客様も多くいらっしゃいます。そんなとき、花束を贈る相手はどんな人か、自宅に飾ってある花はどんなものか、などを想像します。
たとえば、「妻へ渡す花を探している」と来店された方には、「どんな気持ちを伝えたいですか?」「奥様がよく着ている服の色は?」「どんな性格ですか?」など、贈り手の想いと受取り手のイメージを、お話を通して掘り下げていきます。
花は気持ちを贈るもの。贈り手の気持ちがしっかり表現された花選びをお手伝いできればと考えています。
「花との距離を近くしたい」という浅井さんの考えから、花はストッカー(ガラスのショーケース)に入れず、そのまま並べられています。温度変化の差が少ない蔵だからこそですね。
浅井さんのお客様に対する想いと、アイデアやセンスに惹かれて人が集まり、ファンになっていく。ここまで人気になるとは思わなかったと、滝島さんも驚いていると言います。
滝島 細かなところにも妥協しない浅井さんのおかげです。これからも地域に愛される花屋づくりを続けていきたいですね。
テーブルリースなどをつくるワークショップも不定期で開催されているほか、オンラインでキットを購入して自宅でつくることもできます。子どもの花育としても魅力的ですね。
ただ花を売るのではなく、贈り手や受取り手のよろこび、花が飾られた時間、空間の印象までを想像し、花を提案する浅井さんのプロフェッショナルに感激しました。
ぜひ来店して、浅井さんが生み出す花の世界を体感してみてください。きっと、あなたの生活を彩る花が待っていますよ。
店名 蔵の花屋 コトハ
住所 東京都立川市砂川町3-9-7
TEL 042-537-7009
営業時間 10:00~17:00
定休日 木曜日、日曜日、祝日 (時期により変更あり)
※12月28日~30日は毎日営業、2021年1月は12日より営業開始
2021/01/14