南極・北極科学館は、南極や北極の観測、研究などを行う国立極地研究所の広報展示施設として、立川市に2010年7月に開館した施設です。
大きな特徴は、南極および北極観測に使用した器具や装置をはじめ、研究用に採取した鉱物、生物標本、映像等に至るまで、ほとんど「実物」を展示しているため、極地の状況をリアルに体感できることです。
更に館内撮影は自由で(オーロラシアター除く)、児童・生徒のための、わかりやすい副読本等も用意されているため、大人も子供も楽しく地球の極地の秘密を学べます。
今回は、南極観測隊に3回参加、副隊長も務めた経験もある広報室の熊谷さんに、南極での研究・観測エピソードを中心にお話をお聞きしました。
「南極観測隊は、沿岸部にある昭和基地にて、冬季は総勢30名程度、夏季は100名程度の人数で滞在します。調査については南極の大気、気象、地質、生態系、海など多方面に渡って行います」、「昭和基地の位置するエリアはオーロラが良くできる場所にあるので、特にオーロラ観測については歴史があります。館内にあるオーロラシアターで放映しているオーロラの映像も、研究用に撮影した静止画像を沢山つなげて動画にしてありますので、色や形の変化を是非観察してください」と熊谷さん。
また、極地観測は選り抜きの研究者が行くものかと思いますが「観測隊は共同体の村の様な形態で、半分は研究者達ですが医師や調理人、各計測機器の技師や大工なども含まれているのです。日本の複数の企業の技術者も参加していますし、医師や複数の職種では一般公募を行って観測隊に加わってもらいます。」と話してくれました。
展示室には前述のオーロラシアターやライブ映像の他に“歴史”、“大気・氷”、“調査機器”、“生物”、“鉱物”の展示や、昭和基地のジオラマや居室等、観測隊の生活が垣間見える展示等もあり、極地ならではの情報がバランスよく学べます。
昭和時代に利用していた雪上車や犬橇なども展示され、当時の観測隊の様子がリアルに伝わってきますし、海中生物の標本等も、なかなか水族館等では見られない生物も多く、驚きの連続です。
極地の鉱石の展示では、採取された色々な鉱石が並んでいますが、ルビーやサファイヤ等の鉱石もあります。これらはインド大陸やアフリカ大陸でも産出される鉱物なので、それらの大陸と南極大陸が太古の昔、陸続きだったという話の信ぴょう性の高さを垣間見ることができました。
極地では隕石も良く発見されるそうで、ここでは月の隕石と火星の隕石を並べて展示しています。双方を同時に見られる施設は世界でも数少ないとの事で、こちらも見逃せません。
さらに極地の生物の剥製展示も行われています。最近では水族館でも、ペンギン等極地の生き物が見られるところも多いのですが、野生に生きた個体の剥製は、飼育された個体とは違う、厳しい自然を生きる逞しさの様な雰囲気を感じる事ができます。
地球温暖化により、北極・南極も徐々に影響を受けているというという事は広く知られていますが、それは極地の観測隊の皆さんが、日々過酷な環境の中で調査を進めていることで実情を把握できます。
展示を見ることで、観測隊の皆さんの活動を知るとともに、温暖化に対して私たちができることなどを再確認できる機会になりそうです。
南極観測隊で調査活動を行った熊谷さんも「比較的緯度が低い西南極の氷は溶け始めています。また、氷が南極より薄く(南極の氷は降り積もった雪が固まってできた氷で約2,000m、北極の氷は海の水が凍った氷で数m程度)、人間の居住圏に近い北極の方が、温暖化による氷解の影響が早く出ます」と危惧しています。
南極・北極科学館を運営する国立極地研究所は、今年で創立50周年を迎えます。南極・北極科学館でも50周年記念の企画展示や、特設サイトの公開を予定しています。公式ホームページのチェックもお忘れなく!
●●●DATA
国立極地研究所 南極・北極科学館
所在地/〒190-8518 東京都立川市緑町10-3
URL/https://www.nipr.ac.jp/science-museum/index.html
電話番号/042-512-0910
営業時間/10:00~17:00(最終入館16:30)
休日/日・月・祝日、第3火曜日(その他年末年始休み有)
入場料金/無料
その他/団体利用10名以上、校外学習で利用の際は、事前に予約が必要です。
2023/01/17