新緑の霊山を格式高く進む大行列

武蔵御嶽神社日の出祭

開催時期:5月上旬   #春の歳事   エリア:

オオカミ信仰という言葉を聞いたことはありますか。オオカミは農作物を荒らす動物を追い払ってくれることから、災禍から人を守る神として関東地方を中心に信仰の対象になっていきました。大口真神という神名を授けられ、武蔵御嶽神社にも祀られていて、「おいぬ様」として親しまれています。

武蔵御嶽神社の神職などが住む社家にはそれぞれ先祖代々受け継がれてきたおいぬ様の像が祀られていて、各家で大切にされています。今年3月、20軒の社家のおいぬ様を写真家の鶴巻育子氏が撮影した写真集が刊行されました。神社の社務所で購入できます。

令和5年は大口真神の12年に一度の式年の年で、境内の大口真神社では式年祭がおこなれていて、5月21日(日)まで御神像が御開帳により公開されています。

明治38年に絶滅したといわれるニホンオオカミですが、信仰として今も人々の心に息づいています。

茅葺屋根の宿坊が歴史を感じさせる集落
笙(しょう)や篳篥(ひちりき)が雅びな雰囲気を醸し出す

修行する山伏の入峰の儀式が発祥と伝わる日の出祭。その名は日の出とともに行われたことに由来するといわれます。

祭りは5月7日の宵宮から始まります。神様を白い布の絹垣で覆い御岳平に設けられた御旅所まで闇の中を厳かに進みます。
そして翌8日、出発の神事を行った後、神職、猿田彦命、白丁、鎧武者、神輿、稚児そして参列者など約100名からなる長い行列が宿坊の点在する集落を通って神社を目指します。

宿坊は御師と呼ばれる参拝する信徒をお世話する神職が営む宿で、行列が通りかかると参道に人々が出て迎える姿が見られます。最後の330段の石段を上がって神社に到着し、拝殿を三周して渡御は終了です。最後に神輿にお移ししていた神様を再び絹垣で覆い神社にお戻しして二日間の祭りは終わります。

標高929メートルの御岳山山頂に鎮座する武蔵御嶽神社。美しい新緑の中を格式高い行列が行く中世より続く祭りです。

太鼓の乾いた音が響く
名残のしだれ桜の中、拝殿の周りを回る神輿

写真提供:茂垣貴子

●DATA
[データ]
開催時期/5月上旬
住所/東京都青梅市御岳山176
ホームページ/ http://musashimitakejinja.jp/
アクセス/JR御嶽駅からバスでケーブル下へ。 ケーブルカー御岳山駅から徒歩約25分