※令和3年は中止です。
江戸時代に整備された甲州街道沿いに十五の宿場があったと言われる八王子。短い距離を細かく刻むように並んでいたであろう宿場の名残りを見ることができるのは八日市場宿跡。石に刻まれた文字がその場所を示しています。泣き相撲が行われる子安神社の地区も「神社の周りには旅籠が多くあったと聞いています」と神職の方が話してくれました。
八王子は古くから織物業で栄えた土地でもあります。宿場町で市が開かれるようになると周辺から集まる絹織物の取引が盛んになり、その商談の場所として花柳界が生まれ、最盛期には芸妓も200人を越える数になったといいます。現在は黒塀や石畳など花街の雰囲気を漂わせる町並みを作り、芸妓もその文化を伝えています。
子安神社は八王子を1200年余見守る神社です。主祭神は木花開耶姫命。神話において炎の中で出産した女神様として知られ、そこから安産や子授けの神様と言われます。境内は大木が茂り、涼しい木陰を作っています。
秋分の日に行われる泣き相撲。泣く子は育つ、のことわざから神様に元気な泣き声を聞いていただき健やかな成長を祈る行事です。
当日境内は朝から大賑わい。赤ちゃんは月齢毎に時間を分けて集まり、御祈祷を受け、数人ずつ名前を呼ばれて親御さんから舞台上のお相撲さんに預けられます。お相撲さんは拓殖大学の相撲部の学生さんが務めます。
いよいよ取り組み開始。行司さんは「にぃ~しぃ、○○ちゃん。ひがぁ~しぃ、○○ちゃん」と呼び出しを行い、赤ちゃんの前に立ち、大きく動いたりおかしな顔を作ってみたり奮闘します。その様子は見物人の笑いを誘い、親御さんたちはシャッターチャンスを逃すまいと撮影に一生懸命です。
取り組みが終わると小槌を振ってお祈りをし、額に神社の印を押してもらい、お相撲さんから親御さんへ戻ります。
舞台の脇に目をやると梨のお供え物。梨の語源は「中酸(なかす)」と言われていて、それが「泣かす」に通じると神社に伝わっています。多摩地域は梨の産地でもあります。瑞々しい梨と赤ちゃんの泣き声、9月の八王子の風物詩です。
今年(令和3年)はコロナ禍の影響で中止ですが、来年は元気な泣き声が聞こえますように。
写真提供:茂垣貴子
●DATA
[データ]
開催時期/9月、秋分の日
住所/東京都八王子市明神町4-10-3
ホームページ/
https://koyasujinja.or.jp/
アクセス/JR八王子駅より徒歩約5分、京王八王子駅より徒歩約2分