粥で占う今年の作柄

二宮神社 筒粥の神事

開催時期:1月15日   #冬の歳事   エリア:

小正月。この言葉から何を連想されますか。新年を迎えてから2週間たち一段落つく頃。女正月とも呼ばれて正月の準備で疲れた女性をねぎらう日という風習も残っています。

またこの1月15日は年の初めで、農作業が始まる前の時期でもあり、古来より今年の作物がどうなるのかを占う日としてふさわしいとされ、動物の骨の亀裂を見る太占、湯が沸くときの音を聞く鳴釜、粥にはえるカビや米粒の数で占う粥占などの占い行事が各地で行われます。

あきる野市二宮の二宮神社では「筒粥の神事」が行われます。長さ10cmほどに切った篠竹を32本、ひもですだれ状に編み、米3合と一緒に炊いて、「竹筒に入った粥の量」でその年の農作物のでき具合を占うもので、毎年小正月の頃に行われます。

科学が未発達の時代にはこの占いの結果で農作方針が決まり、唯一の農作指導の指針となる大事な神事だったことでしょう。粥の中に入れる竹筒には、この神事のために養生されている境内の篠竹が使われます。

早朝6時、拝殿での神事のあと、燃える薪の上に鍋を吊るし、交代で薪をくべ、宮司や氏子は鍋のまわりを囲んで粥になるのを今か今かと待ちます。この神事では32種の品目が占われます。

江戸時代の建立といわれるあきる野市・二宮神社社殿
火付けをする宮司と氏子
勢い良く燃え上がる炎で粥を炊く

編んだ竹の順に占う作物が決まっていて、「麦」「うり」「茄子」「かいこ」「大豆」「小豆」「もろこし」「栗」「ひえ」「米(わせ、なか、おく)」「ごま」「芋」「大根」など、この土地で栽培される作物すべてを表します。そして最後の1本は「世の中」。その年の世相を占うものだそうです。

「不作」と出れば種まきを多めに、「豊作」と出れば種の量を加減できると、これから始まる農作業の目安にしてきたのでしょう。また「多く取れる」と出た作物によって天候も占えるとのこと。悪天候に強い作物が「豊作」と出れば、その年は悪天候が続く、日照りに強い作物に豊作と出れば、日照りに注意と予想されるからだそうです。

粥ができあがると鍋を拝殿に移し、宮司が神前で竹を取り出し一つ一つほどいて縦に割り、中の粥の量から作柄を読み上げ記録します。記録したものは「御筒粥記」と呼ばれ、農家に配られます。これを手引きに今年の計画の参考にします。

二宮神社の筒粥神事がいつごろから行われてきたのか、その起源は確かではありませんが、各地に広がる粥占いが江戸時代以前から行われてきたことを踏まえると、比較的古くから地域の年中行事として続けられてきた可能性が高いのではないかと推測されています

この日は「どんど焼き」も行われます。境内にどんど焼きのやぐらが立ち、粥を炊いた火で点火します。点火の役は、集まった人の中からその年の干支の人が選ばれます。年男年女はその年の年神様の御加護を多く受けるとされていて、縁起が良いと考えられるためで、この神社のどんど焼きでもその風習が受け継がれているのでしょう。

朝暗いうちから始まった神事も、「どんど焼き」の火が下火になる頃にはすっかり明るくなり、境内は新年の清々しい空気に包まれます。

粥の量を慎重に見る宮司
結果を見たあとの竹筒
占い結果を記した御筒粥記
大きく燃え上がるどんど焼き

写真提供:茂垣貴子

●DATA
[データ]
開催時期/1月15日
住所/東京都あきる野市二宮2252
ホームページ/ https://x.com/NinomiyaMusashi
アクセス/JR五日市線「東秋留駅」北口 徒歩3分