高尾山の山伏が繰り広げる火渡り修行

高尾山火渡り祭

開催時期:3月第2日曜日   #春の歳事   エリア:

高尾山薬王院で精進料理をいただけることをご存知でしょうか。

仏教の伝来と時を同じく日本に入ってきたと言われる精進料理には、素材を丁寧に扱い工夫を重ねて自然からの恵みをいただく心が息づいています。

修行僧の食事として知られ、野菜のみを使った質素な食事という印象の精進料理ですが、言い換えれば旬の野菜の味わいを生かした贅沢な料理ともいえます。

薬王院のお料理事情を遡ると江戸時代中期頃には醤油や味噌、ごま油を自製していたようで、調味料を仕込むところからが料理だった様子が伺えます。

薬王院では通年いただける2種類のお膳に加えて、季節限定のお膳もあり目移りしてしまいます。3月から始まるそば御膳には、ごま豆腐や野菜の煮物、自然薯のとろろに加えてフキノトウのてんぷらが並び、その苦みが季節を感じさせてくれます。

自然豊かな薬王院の境内で味わう精進料理。季節の移ろいを感じながら身体をいたわることができます。予約が必要なお膳もあり、ケーブルカーが運休する日もありますので、詳しくは公式ホームページをご確認ください。

山伏の手で撫で木が次々と火中に投じられます
祈りの山、高尾山
薬王院の精進料理。季節のそば御膳

毎年3月第2日曜日に行われる「高尾山火渡り祭」。薬王院のご本尊である飯縄大権現の智慧の浄火により災厄を祓います。

京王線高尾山口駅から歩いて5分の自動車祈祷殿前広場には大きな護摩壇が設けられ、四隅に真竹、幣束をつけて静かにその時を待っています。

 ほら貝の音を合図に勇壮な儀式が始まります。道場の入り口での「阿(あ)字(じ)門(もん)の儀」、魔物から道場を守るために四方に矢を放つ「法(ほう)弓(きゅう)の儀」。そしていよいよ点火。燃え盛る炎の回りを梵天御輿が走り、行者が笹の葉で熱湯を撒いて心身を清める「湯(ゆ)加持(かじ)」と続きます。

 そして炎の中に撫で木を投げこむ山伏の姿が見えます。撫で木は名前と年齢を書きお願い事の祈りを込めて納められたもの。病気の人は患部をなでて納めるとよいそうです。

 火渡りは修験者に続いて一般の人も参加できます。清らかな炎を渡ることで災厄をはらう功徳をいただく春の行事です。

燃え落ちてすぐの火を渡る山伏
祭壇前に設けられた護摩壇
魔物から守る矢を四方に放つ

写真提供:茂垣貴子

●DATA
[データ]
開催時期/3月第2日曜日
住所/東京都八王子市高尾町2390(高尾山自動車祈祷殿)
ホームページ/ https://www.takaosan.or.jp/
アクセス/京王線高尾山口駅から甲州街道に沿って徒歩5分(高尾山自動車祈祷殿)