趣き深い日本庭園で
香り豊かな梅花を愛でる
【京王百草園(日野市)】

早春を彩る香り豊かな梅の花。「お花見」というと、現代人はまず桜の花見を思い浮かべますが、古の奈良の都の花見は梅の花見が主流だったそうです。茅葺屋根によく似あう梅の花はいかにも日本的な花ですが、実は中国から伝来したもの。一説には遣唐使が日本に持ち込んだともいわれています。奈良時代の貴族にとって、当時の先進国である唐から伝わった梅の花は珍重すべき花だったのでしょう。万葉集には桜を詠んだ歌約40首に対し、梅を詠んだ歌は120首も収録されています。万葉人たちは桜よりも梅を好んだのかもしれません。

正門をくぐり石段を上る
正門をくぐり石段を上ると「和」の世界が広がります

日野市の京王百草園は江戸時代の名残を留める趣ある日本庭園。梅の名所としても知られています。ここは江戸時代、小田原城主の妻であった寿昌院慈岳元長尼が、徳川家康の長男・信康を追悼するため松連寺を再興した際に造られた庭園です。明治になると松連寺は廃寺となり、百草園は地元出身の生糸商人が所有していましたが、1957(昭和32)年に京王電鉄の所有となり「京王百草園」として開園しました。

日本庭園
江戸時代の名残をとどめる趣ある日本庭園

園内には約50種500本の梅樹があり、1月下旬には早咲きの梅が咲き出し、2月中旬~3月上旬にかけて園内を甘い香りで包みます。中でも存在感があるのが茅葺屋根の松連庵をバックに白い美しい花を咲かせる「寿昌梅(じゅしょうばい)」。この梅は寿昌院慈岳元長尼が自ら植樹したと伝えられている古木です。

寿昌梅
茅葺屋根の松連庵の前にそびえる「寿昌梅」

百草園は「江戸名所図会」にも紹介された名園で、大田南畝、徳富蘆花、田山花袋など多くの文人が訪れています。特に若山牧水は学生の頃からしばしば訪れ、熱烈な恋の歌を詠みましたが、その恋は実りませんでした。園内には恋人小枝子との失恋を詠った「独り歌える」の歌碑があります。また、同園は豊かな自然を残す多摩丘陵の一角にあり、晴れていれば見晴台から都心のビル群や、遠く筑波山まで望めます。

見晴台
見晴台からは、晴れていれば都心のビル群も望めます

多摩地域には京王百草園の他に、吉野梅郷(青梅市)、府中郷土の森博物館(府中市)、国営昭和記念公園(立川市)、高尾梅郷(八王子市)など梅の名所があります。

連久(れんきゅう)
淡紅色をした「連久(れんきゅう)」は八重咲きで華やか
満月枝垂れ
白い一重咲きの「満月枝垂れ」

●DATA
京王百草園
所在地/東京都日野市百草560
入場料/大人300円 子ども100円
アクセス/京王線百草園駅から徒歩約10分(途中、急坂あり)
ホームページ/京王百草園|京王グループ (keio-mogusaen.jp)

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