~手間暇かけた本物の味を追求~ 「熟成寝かせ蕎麦 たかや」 | イマタマ

~手間暇かけた本物の味を追求~ 「熟成寝かせ蕎麦 たかや」

2024/02/01

こんにちはグルメライターの中村あきこです。

暦の上で春の始まる日「立春」の前日にある「節分」は、旧暦では年越しの「大晦日」にあたるそうで、江戸時代にはその日に「年越し蕎麦」を食べていたそうです。今でも信州や出雲など蕎麦の名産地では「節分蕎麦」として変わらず親しまれています。

蕎麦といえば日本の食文化のイメージがありますが、実は世界にも蕎麦粉を使った様々な料理があります。例えば、ロシアの「ブリヌィ」という塩味のパンケーキや、イタリア ロンバルディア州のヴァルテッリーナの郷土料理「ピッツオッケリ」というパスタなど。他にもフランス北西部のブルターニュ地方の郷土料理である「ガレット」は日本でも専門店があるほど人気の蕎麦粉の料理です。

蕎麦粉に水と塩を加えて、縁のない丸い鉄板で、クレープのように薄く丸く焼き、卵やハム、チーズをのせ、生地の端を4辺に少しずつ折りたたみ正方形に形を整えて仕上げます。こんがり焼けた香ばしい生地と、半熟卵ととろけるチーズが相性よく、同じ地方で造られるりんごのお酒「シードル」と合わせるとこれまた格別なのです。

しかしながら、やはり日本人にとって「日本蕎麦」は特別な食べ物。『細く長い人生』を願った縁起を担ぐものでもあります。ズズっと勢いよく蕎麦をすする仕草は、古典落語に何度も登場するほど、誰もがイメージしやすい粋で文化的な食べ物なのです。

また、その蕎麦を美味しく打つことのできる熟練された職人の技は、時に通をも唸らせる贅沢な日本の財産であるのではないでしょうか。

さて今回取材に伺ったのは、立川市羽衣町の閑静な住宅街にある、創業48年の蕎麦処

「立川熟成寝かせ蕎麦 たかや」さん。

蕎麦屋の家に産まれ、17歳の頃から蕎麦作りに携わり、熟練された高度な技術を持つ二代目店主がご夫妻で営む、他には味わえない手間暇かけたこだわりの蕎麦「熟成寝かせ蕎麦」を取材し、その魅力をたっぷりとお届けいたします。

立川羽衣町の閑静な住宅街の中にある創業48年の蕎麦処「熟成寝かせ蕎麦 たかや」

ツルツルと滑らかな喉越しの名物「熟成寝かせ蕎麦」

JR南武線「西国立駅」から徒歩約5分。立川市羽衣町の閑静な住宅地にある創業48年の蕎麦処「熟成寝かせそば たかや」は、2020年に立川市と立川市商店街連合会が主催する「TACHIKAWA AWARD たちかわの輝く個店」で審査員特別賞を受賞した立川市民が推薦する〜推しの名店〜です。

一枚の壁の裏側にある入り口は隠れ家風で趣があります。また敷地内に5台分の駐車スペース完備

同市錦町にある創業93年の蕎麦屋「高尾亭」から暖簾分けされた「羽衣町高尾亭」は、この場所で、現在の二代目店主である高橋隆志(たかはしたかし)さんのご両親が営まなれていました。

蕎麦屋の家に生まれた隆志さんは、若干17歳から蕎麦職人への道を歩み始め、2019年4月に先代から受け継いだ店舗を改装し、現在の屋号に変更。元気女将と評判の妻、知美(ともみ)さんと、夫婦二人三脚日々蕎麦の魅力を発信しています。

清潔感のある落ち着いた店内はテーブル席、カウンター合わせて全16席

引き戸を開けると、「いらっしゃいませ」とキビキビと元気な女将の声。
席に案内され、まずは温かい蕎麦茶の香ばしい風味に癒されます。

温かいそば茶の香りにホッとひと息、これぞ蕎麦屋の醍醐味

メニューを開くとまず目立つ場所に「たかやの定番蕎麦」とあり、これがこの店オリジナルの製法で作られる名物の「熟成寝かせ蕎麦」なのだそう。中でも「せいろ・粗挽き・田舎」三種の蕎麦の食べ比べができる「蕎麦三種盛り」というものがあり、この一皿で名物「熟成寝かせ蕎麦」を味わうことができます。

1種類ずつ少量を茹でる手間を考えると、2人前以上ならともかく、1人前からそれを試せるとは、他ではあまり見かけない通好みのサービス。「ちょっとずつ色々試したい!」。こんな欲張りな美食家たちの心をギュッと掴むこと間違いなしですね。

蕎麦好きに堪らない3種くらべ

「蕎麦三種盛り」(一人前1620円税込)右からせいろ・粗挽き・田舎 量はせいろの1.5倍

それではさっそくいただいてみます。ツルツルっとした麺はコシがあり、シコシコと噛みごたえがよく、同時に蕎麦の香りが鼻腔をふわっとすり抜け、その風味は噛み締めるたびに口の中に広がります。

「せいろ」というのは、一般的に蕎麦粉につなぎの小麦粉を二割加えた、二八蕎麦と呼ばれるものだそうですが、この店の「せいろ」は店主の名が付く「せいろ たかし」というそうで、他にはない唯一無二のオリジナルです。

季節ごとに一番美味しい蕎麦粉の産地を選び、蕎麦の実から殻を外した「抜き実」という状態から、お店の石臼を使って挽きます。挽き方の違う粉をブレンドして造る蕎麦は、香りと味が断然違います。 

この日の蕎麦は茨城県猿島郡堺町産の「常陸秋そば(ひたちあきそば)」

「粗挽き」は蕎麦の実の殻以外の部分を砂くらいの荒さに挽いてあり、蕎麦の表面にもその粒が見て取れます。つなぎに中力粉を使うそうで、モチッと弾力のある食感が特徴的でした。粗挽きの粉で麺を打つのは高い技術が必要で、熟練した職人ならではの手仕事だそうです。

そして蕎麦の実を殻ごと挽いた黒っぽい色合いの田舎蕎麦。噛みごたえのあるその太さと、もちもちとした食感に驚きます。
それぞれがこんなにも違いがあるのだと蕎麦の奥深さとその魅力にすっかり引き込まれてしまいました。

天ぷらや、天丼、親子丼といった定番メニューに加え、広島牡蠣南蛮そばや、10食限定のゆず蕎麦、セリ鴨蕎麦など魅力的かつバリエーション豊かな季節限定メニューも見逃せません。 

ミディアムレアの柔らかジューシーな鴨がたっぷり入った鴨汁(900円税込)を追加
旬の野菜の天ぷらが充実。秋田県のブランド野菜三関セリの天ぷらは、サックサクのうすごろもの食感と根っこの甘みが堪りません!

「そば たかや」が提案する蕎麦の楽しみ方

この地域は住宅街の中にあることから、昔から出前中心の蕎麦文化が定着していました。

かつての「羽衣町高尾亭」もそうでした。

しかしながら2020年のリニューアル時、先代から受け継がれた良さを活かしつつも、「より蕎麦の文化や蕎麦の風味を楽しむ店にしたい」と方針を変更しました。

そこで「蕎麦の楽しみ方」を知ってもらいたいということを念頭において、他店がやっていない取り組みを次々と始めました。季節ごとに変わる豊富なメニューや、桜の葉や柚子を練り込んだ変わり蕎麦の提供。そして今ではすっかり定着した名物「蕎麦三種盛り」もその一つです。

「蕎麦なのに値段が高い。と言われることもよくありますよ」と女将は話します。確かに日本のファストフードでもある蕎麦は早くて安いといったイメージがありますが、また一方で高くてもそこへ訪れる価値のある蕎麦も多くあります。「そばたかや」では新たなお客が訪れるようにななりました。

蕎麦は「挽きたて、打ち立て、茹でたて」というのが一般的です。しかしながら、「そば たかや」の蕎麦は違います。挽いてから粉を一日寝かせ、粉に水を入れて団子に練って6時間、さらに麺に切ってから、恒湿庫で約半日寝かせます。なんと蕎麦の抜き実の状態からお客様の口に入るまで42時間もかかるのです。この作業をほぼ毎日、一日に約3キロほどの量の蕎麦を隆志さん一人でこなします。

石臼を使って製粉するのにもこだわりがあり、細かく挽くものと、粗く挽くものをオリジナルにブレンドし、食感と香りの両方をうまく引き出せるように仕上げるそう。

こうした職人の努力と工夫は、味わってこそその違いに気づき、価値のあるものと感じていただけるのではないでしょうか。「蕎麦本来の美味しさを知ってほしい」それが職人高橋隆志さんの願いなのです。

蕎麦粉を挽石臼は客席から見ることができます

女将の知美さんは、接客やお店の運営という立場で親方を支えています。お料理の割引きサービスが受けられる、お得なメルマガ会員向けに書かれている女将のブログがとにかく見応えがあります。商品の紹介だけでなく、誰かに話したくなるような蕎麦の豆知識や、親方の小ネタなど。職人隆志さんとそのお蕎麦への愛情が伝わる内容です。

職人の熱い思いを厨房の親方に代わって女将がお客様に伝えます

何より「美味しい蕎麦を愉しむこと」がこの店の特徴。先付けの炙り蕎麦味噌から始まり、三種の蕎麦でしめる蕎麦懐石や各種コース料理などはゆっくりと蕎麦の世界を堪能することができます。

炙り蕎麦味噌や自家製のそば豆腐、そばがきなど蕎麦屋ならではの気の利いたおつまみも充実しています。好みのお酒で楽しむ「蕎麦呑み」は蕎麦好きならずとも試してみたいひと時です。

手間暇かけた職人の打つ蕎麦をいただきながら、日本蕎麦の奥深さや、本来の美味しさを味わい堪能してみることのできる名店「熟成寝かせ蕎麦 たかや」におでかけしてみてはいかがでしょうか。

気の利いたおつまみで愉しむ蕎麦呑み
好みの日本酒と蕎麦のマリアージュを楽しめます

グルメライター 中村あきこ 

グルメライター/日本とフランスの料理学校でフランス料理を学び、帰国後、都内フレンチレストランでサーヴィスに従事。マネージャーやウエディングプランナーを経験。また、料理とワインのマリアージュの素晴らしさに心が奪われた事をきっかけに、JSA認定ソムリエ、シニアソムリエを取得。お店に立つ側と食べる側、両方の視点から感じたものを、素直な言葉で綴り、そのホスピタリティを伝えている。現在は知人の店でヘルプシェフとしてキッチンに立つことも。二児の母。長男の育児中の食の悩みから、幼児食インストラクターを取得。親子で楽しく囲める食卓も日々研究中。

DATA

施設名 立川熟成寝かせ蕎麦 たかや
住所立川市羽衣町3-15-27
TEL042-595-6922
営業時間11:30~15:00(LO14:30)
17:30~21:00(LO20:30)
定休日月曜・火曜
公式サイトhttps://soba-takaya.com/

※最新の情報は公式サイトをご確認ください。



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