青梅・五日市線沿線には、歴史ある文化が今も息づき、長い時間をかけて熟成された、深い味わいが楽しめる名店が点在します。夏の季節。ぜひ一度味わってほしい、このエリアの「蕎麦」と「和スイーツ」。都会の喧騒を忘れさせる空間で、逸品グルメをお楽しみください。
そば本来の豊かな香りを味わうことのできる「おせいろ(880円)」
創業150年の寿美屋は元々、炭問屋と製麺業から始まったそうです。江戸時代、旗本に奉公に出ていた人が、家に帰る途中で粉を買ってそうめんを作ってもらうのが当時の習わしだったとか。そのため当時は、周辺にも製麺業を営むお店が多かったそうです。
20年ほど前、貸しスペースとなっていた場所を活用し「お蕎麦や一品料理を提供するお店を作りたい」と考え、店主自ら一茶庵流のそば打ちの修行へ。蕎麦店、寿庵忠左衛門をオープンさせました。
店名の由来は、五日市の父と呼ばれた祖父岸忠左衛門さんから。長年製麺業を営んできた「寿美屋」から一字をもらい、「寿庵忠左衛門」と名付けたといいます。岸忠左衛門さんは「五日市の父」と呼ばれ、地域の水道・電気・鉄道設備の整備に尽力した人物。多くの人に愛された人物で、阿伎留神社境内に、その功績を称え岸忠左衛門翁像が設置されているほど。店主の岸さんは「立派な先祖の名を汚さないよう、気を引き締めて頑張っている」と話します。
一茶庵流の考え方から、お腹を満たすだけではなく「すべてをご馳走と感じてもらう」ことを大切にしているそう。そのため、お蕎麦だけではなく、内装にもこだわり抜いたと言います。
もちろん、お蕎麦にも一切の妥協を許さず、北海道産のそば粉をメインに手打ちにこだわります。店主の岸さんが直々にそばの打ち方を伝授し、今でもその麺打ちが継承されています。
鰹節も1本まるごと削り、出汁に使用。都内にある多くの蕎麦店の中でも、そのこだわりは珍しいと言います。寿庵忠左衛門の薬味はねぎ、大根おろし、わさびの3種類。特にわさびは、本わさびを擦ったものを提供しており、細かい部分にもこだわりを感じます。今では観光客だけではなく、同店での食事を楽しみに遠方から訪れるお客さんも多いとか。
多くの方に人気のメニューは、そば本来の豊かな風味を感じる「おせいろ」。塩だけでいただいたり、蕎麦湯でつゆを薄めていただく常連の方もいるそう。岸さんは「ご自身のお好みで、いろいろな召し上がり方を楽しんでほしい」と話します。「季節の天ぷら」も人気メニューの一つで、2〜3人で食べるのにちょうどいいボリュームだとか。同店では、地酒である吟醸酒「しろやま桜」も取り扱っています。しろやま桜を片手に、「おせいろ」「季節の天ぷら」を楽しんでみてはいかがでしょうか。
店主 岸和江さん「平日と土日祝の夕方以降は、比較的お待たせせずにご案内できます」
JR武蔵五日市駅から徒歩5分 住所:あきる野市五日市64 11:00~15:00、16:30~21:00(蕎麦売り切れ次第早めに終了あり) 水曜定休(祝日は営業)
☎042-595-2438
URL:http://www.sumiya-men.com/?mode=f2
青梅生まれのブランド豚、東京Xを使用した「肉そば(1,000円)」
大正4年創業の玉川屋は、古民家の佇まいを残す茅葺屋根の老舗蕎麦店。来年で創業100年を迎えます。御岳渓谷の真上に位置し、山々に囲まれたロケーションには圧巻です。
「私もこの家で育ちました」と、3代目ご主人宮野敏彦さんは話してくれました。もともと民家だったものを、店舗として改装。「若い方にとっては茅葺屋根が新鮮なようで、よく写真を撮っていますね」とご主人。同店には井伏鱒二、太宰治、木山捷平、徳富蘇峰らも足繁く通っていたそうで、店内には色紙がたくさん飾られています。フランス駐日大使クローデル夫婦や、資生堂初代社長など、多くの著名人に愛された名店です。
初代のご主人の頃は、御岳渓谷とお店との間に道がなかったため、船で川遊びを楽しむ人へ、ロープを使いお蕎麦を提供していたそうです。初代のご主人はとても研究熱心な方で、独自のそば打ちを開発したと言います。自ら蕎麦を育てたりと、常に美味しいお蕎麦を探求していたとか。その熱心さから、ラジオへの出演を依頼されたり、お客さんから「先生」と呼ばれていたほど。3代目のご主人もその伝統を守り、毎日丁寧に蕎麦を手打ちします。そば粉は北海道産のものをメインに、国内産だけを使用。
一番人気は、旬の食材を使った「天ざる」。夏はとろろそばを注文する方も多いそう。麺、つゆともに御岳流水を使用。稚鮎の塩焼き、ヤマメの塩焼きなどの一品料理もあり、さまざまな自然の恵みを味わうことができます。また、青梅のブランド豚「東京X」をふんだんに使用した、肉そばも絶品。ここのお蕎麦を楽しみに、遠方からいらっしゃるお客さんも多いとか。
落ち着いた店内は情緒があり、ゆったりとした時間が流れています。自然を感じながら、こだわりのお蕎麦を堪能してみては。
玉川屋では、持ち帰り用の手打ちそばも販売されているので、お土産にも最適です。
天ざる
とろろそば
店主 宮野敏彦さん「つゆは 若干濃い目ですので、お好みに合わせて召し上がってください」
青梅まち巡りあんみつ
2012年に青梅駅前に開店した「つぶあんカフェ」は、地元の人からも観光客からも愛されるカフェ。夏のイチオシ「青梅まちめぐりあんみつ」は、地元和菓子店のスイーツが詰まった、青梅を満喫できる商品です。
「お店に一軒一軒ご協力のお願いをして、味のことや値段のこと、いろんなアドバイスをいただきながらでき上がった商品です」と店主の山田さんは話します。今年からは、地元新商品「青梅大学いも学部」の大学芋が乗って新登場。「全てカフェから歩いて行けるお店のお菓子なので、お土産に買って帰るのも、おすすめのコースですよ」
そのほか今夏の新スイーツとして、「とうふ工房ゆう」とのコラボスイーツも発売。カットした豆腐にそのまま餡子などをトッピングした和風パフェで、素材そのものの美味しさが味わえる新感覚のおやつです。また、青梅産のゆずやブルーベリー、ヤマモモを使った「夏の青梅ソーダ」も、毎年好評とのこと。食事メニューも青梅産にこだわり、地元の古代米や野菜など、20品目以上の食材を使用した日替わりランチ「今日のごはん」は、毎日食べても飽きが来ないと常連客からも大人気です。
店主の山田さんは、国立生まれ、青梅育ち。つぶあんカフェ経営の他、青梅伝統の織物「夜具地(やぐじ)」がデザインされたオリジナル紙袋の販売など、さまざまな形で町おこしに取り組まれています。「青梅の美味しいもの、素敵なものを日々捜索中。ぜひ、青梅に来た際はお店に遊びにいらしてください」
ランチ+デザートセット
とうふパフェ
青梅ソーダ
店主 山田さん「地元コラボメニューで、青梅・奥多摩の魅力を発信中です」
青梅まち巡りあんみつ900円(7月から販売予定)、夏の青梅ソーダ600円~、コーヒー500円~、平日ランチ・デザートセット1,300円
JR青梅駅から徒歩約1分 住所:青梅市本町131 営業時間11:00~18:00(L.O17:30) 木曜定休
☎0428-25-2251
URL:http://tsubuancafe.com/
石川酒造の酒粕アイスクリーム
福生のブリュワリー「石川酒造」のビールを、旬の食材料理とともに楽しめる「福生のビール小屋」。酒造敷地内にある、テラスが併設されたビアレストランです。
夏のいちおしスイーツは「石川酒造の酒粕アイス」。レストランオープン以来の、ロングランの人気商品です。味は酒粕の風味がまろやかで、食事のシメにお酒とともに注文されることが多いそう。オレンジとブルーベリーが添えられ、さっぱりといただけます。
マルゲリータ
年間を通して人気の食事メニューは、なんといってもビールによく合うピザ。定番人気のマルゲリータの他、季節に合わせて新フレーバーが登場します。
その他ビールとセットでの注文が多い「福生産ソーセージの盛り合わせ」は、地元企業「大多摩ハム」のソーセージ使用の地産地消メニュー。ちなみに「大多摩ハム」のレストランでも、石川酒造で醸造されたビールが販売されています。
ビールのおすすめは、自社地下天然水を贅沢に使用した「多摩の恵」の、ペールエールタイプ。イギリスで多く造られている上面発酵製法のもので、「ホップの香り」と「酵母が発酵中に出す香り」が繊細に混ざり合い、言葉にしがたい柑橘系の香りが豊かに広がります。飲む度に表情が変化する、石川酒造で一番人気のビールです。梅雨明け時期からは、ディナータイムのテラス開放も実施。気持ちいい夜風とともに、福生の美味しいビールに夏メニュー・和スイーツを、ぜひともご堪能ください。
福生産ソーセージの盛り合わせ
生ハムとミラノサラミ盛り合わせ
バーニャカウダ
季節の魚のカルパッチョ
支配人 安部直人さん「新鮮なビールと、地元食材使用のイタリアンをご用意して、お待ちしております」
石川酒造の酒粕アイスクリーム550円、クラフトビール500円~、ピッツァ1,300円、福生産ソーセージの盛り合わせ1,200円
JR拝島駅から徒歩約20分 住所:福生市熊川1 11:30~21:30、隔週金曜日は17:00~ 月・火曜定休
☎042-553-0171 予約してからの来店がおすすめ
URL:http://tamajiman.co.jp/koya/
南アルプス・八ヶ岳の天然氷のかき氷
あきる野市小川にある森田家の敷地内にある「見世蔵 久森」。森田家は、古くはこの地域の庄屋をつとめ、現在の当主である森田康大さんは18代目となります。約6,000㎡という広大な敷地には、国の登録有形文化財にもなった主屋、見世蔵、前の蔵、味噌蔵、西蔵、旧米蔵、御看経堂、門、板塀があり、一足足を踏み入れれば、まるでタイムスリップしたかの様な光景が広がります。
「見世蔵 久森」は、嘉永5年(1852年)に建造された、およそ160年前の土蔵「見世蔵」を改装した甘味茶房。地元生産品を中心に作られたこだわりのメニューの中でも夏、一番人気のスイーツは、名水百選の八ヶ岳南麓高原湧水群で作った「天然氷のかき氷」です。かき氷のメニューが4種あり中でも、地元産路地イチゴを使った「いちご」は、イチゴの入ったフワフワ氷に、濃厚なイチゴソースをかけて食べるかき氷。甘酸っぱさとクリーミーな味わいが虜になります。地元産の食材を使っているため、ソースがなくなり次第、販売終了。また新しい季節のかき氷が楽しめます。
店主 森田康大さん「地元産のイチゴで作るためソースには限りも。ぜひこの夏、一度ご賞味ください」
天然氷のかき氷(いちご・抹茶あずき・ブルーベリー・マンゴー)各900円、特製ソフトクリーム(東京牛乳使用)400円、季節の久森ランチ(平日のみ10食限定)1,500円
JR東秋留駅から徒歩約10分 住所:あきる野市小川633 時間11:00〜18:00 火曜定休
☎042-558-1852
URL:http://www.hisamori.biz/
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