こんにちはイマタマグルメ ライターの中村あきこです。例年より少し遅めの紅葉もピークを迎え、東京の西部、西多摩の山間地域も多くの人で賑わっています。そんな季節に合わせ、「風景」が眺められるような、ロケーションにこだわったお店を選んでみてはいかがでしょうか。多摩地域には広大な敷地を利用した、「食事」に加えて、「風景」も含めて楽しめるエンターテイメント性をもった素敵な飲食店がいくつも存在します。
今回取材させていただいたお店もそのひとつ。都心からのアクセスもよく観光スポットとして人気の「高尾山」の澄んだ空気に包まれた、奥高尾の隠れ家。いろり炭火焼き料理『うかい鳥山』さんは、そんな非日常的な空間でお食事を愉しむことができるお店です。広大な敷地の中にある美しい日本庭園の散策と、移りゆく季節ごとの風景をお部屋から眺めながら旬のお料理がいただける、とっておきの場所をご紹介いたします。
日本の伝統的な文化や歴史に触れながら
まずは情緒あふれる庭園を散策
建築家 隈研吾氏がデザインした、木の温もりを感じるスタイリッシュな駅舎の京王線「高尾山口」駅を降りると、目の前のロータリーに『うかい鳥山』の送迎バスがお出迎え。バスは10:00~19:00の間の00分、20分、40分と1時間に3本運行しています。取材の日は紅葉シーズンよりまだ少し早く、ほんの少し色づき始めた葉が生茂る樹々のトンネルをくぐり抜けながら山道を走ること約7分。あっという間に、山間の隠れ里のような素敵な場所に到着します。耳を澄ますと側を流れる川のせせらぎが聞こえ、山の澄んだ空気に思わず深呼吸をしてしまいたくなるほどです。
こちらが里山の恵みを使ったいろり炭火焼き料理が愉しめる『うかい鳥山』。『うかい』といえば銀座、表参道など東京都心から八王子、神奈川などに和食や洋食と多くの店舗を持ち、鉄板料理の「うかい亭」や、とうふ料理の「とうふ屋うかい」など、それぞれのお店にコンセプトがあります。そのうかいグループの店は、どこも特別なひと時を過ごせる非日常的な空間で、それぞれに旬の食材を使ったお料理が楽しめるのが魅力です。今年で60年を迎えますが、『うかい鳥山』はその原点となる創業店です。
フロント棟へ向かう右手側に、前合掌と呼ばれる茅葺き屋根のひときわ大きな建物が目に入ります。こちらは『 越中五箇山 合掌造り』と看板にあります。越中五箇山とは、富山県の合掌造りの里山の集落として有名です。「遠路はるばる訪れていただいたお客様に“本物”のおもてなしをしたい」との思いから1968年に創業者が富山県から遠く離れたこの奥高尾に移築したのだそうです。そんな趣ある建築物や敷地の中を、創業者の思いを交えながら紹介し、案内してくださったのは、「うかい鳥山」の支配人 鍔田大樹(つばただいき)さん。
経年の美しさを感じるしっかりとした造りのこちらの建物の2階と3階は、移築とともに持ち込まれた貴重な道具や資料などが展示され、見学も可能。養蚕や火縄銃に使われる黒色火薬の生産を生業としていたという、当時のこの家の生活を垣間見ることができます。
1階は、各種宴会など大人数で利用できるスペースとなっていて、結婚式の披露宴会場としても使われているそうです。こちらの敷地はおよそ6000坪あり、その中の日本庭園には神殿があり、神前結婚式などができるそう。お料理にこだわったレストランウェデイングの会場としても大変人気があり、年間50組ほどのカップルがここで誕生するそうです。
引き続き鍔田さんに庭園を案内していただきました。フロント棟を通り抜けて庭園に出ると、そこは別世界。渓谷を見下ろす小道沿いには川が流れ、川にかけられた橋の向こう側には数寄屋造りの離れや休憩用の東屋(あずまや)、また簗場(やなば)と呼ばれる川魚の塩焼き場があり、熟練された職人が、串に刺した鮎や山女魚などの季節の川魚を丁寧に焼きます。
四季折々の里山の味覚とともに楽しむ
いろり串焼きコースに舌鼓
「うかい鳥山」は、大人数の広間から、間仕切りの個室、離れなど約500席あり、シーンに合わせた様々な利用が可能です。特に座敷では小さなお子さんが一緒でも安心して、ゆっくりとお食事ができるのが嬉しいところ。今回案内していただいたお部屋は「向滝」という離れで、幅広い大きな窓からは、四季折々の景色が楽しめます。秋は紅葉を目当てに、毎年多くのお客様が来店されるそう。
この日予約しておいたコースは、鶏肉をメインにしたいろり炭火焼きでいただく「鶏串コース 8,800円」(税込・サービス料10%別)。こちら以外に「牛鶏コース」11,000円、特選和牛のサーロインがいただける「牛コース」14,300円があります。まず最初に鶏の旨みをシンプルに感じられる熱々の鶏スープをいただきます。これからの寒い時期、冷えた体を一気に温めてくれる嬉しい一品。夏には冷製の小さな素麺が供されるなど、季節に合わせておもてなされる一皿からお食事が始まります。続いて里山ならではのお料理が登場します。この日は、とろりとした食感と優しい甘さの胡桃だれが添えられた「焼き胡桃とうふ」や、鱒子や松茸をあしらった「菊花浸し」が登場しました。
コースの中では2種類の川魚のお料理をどちらか選んで楽しむことができます。長野県佐久市のブランド鯉を使った「佐久鯉洗い」もしくは、先ほどご紹介した簗場で焼き上げる「川魚塩焼き」。どちらもとっても魅力的です。今回は特別にその両方の内容をご紹介。
いよいよメインの、いろり炭火焼きをいただきます。「しいたけは笠の表面のみ、お焼きいたします」と、裏返さないのが美味しい焼き方だそう。ひだに溜まった旨みの水分が上がってくるちょうど良い頃合いの熱々のしいたけをお皿にのせてくださいます。立ち上がる湯気がとってもいい香りです。添えられた塩や自家製の辛味噌をつけながら、旨みたっぷりの肉厚椎茸に舌鼓を打っていると、皮目が香ばしく、中はふっくらと焼き上がった鶏のもも肉と、皮目がサクッと焼き上がった手羽中の塩焼きが順に供されます。
お店の中では「うかい鶏」との愛称で親しまれているというこの鶏肉は、静岡県 御殿場の契約農場で平飼いされ丁寧に育てられた鶏なのだそうで、もも肉はとっても肉厚、手羽中も立派な大きさです。炭火でじっくりと旨みを閉じ込めながら香ばしく焼かれたもも肉は、きめ細かくさっぱりと食べやすく、醤油ベースの自家製だれとよく合います。手羽中は塩焼きでいただきましたが、脂も甘くて香りが良く、骨から身を引き離すたび鶏の香りが湯気と一緒に立ち込めます。いろりで焼きたてをいただく里山のご馳走を堪能しました。
焼き物の合間に秋茄子の煮浸しをお口直しにいただき、最後はご飯へと続きます。この日は人気の「麦とろごはん」。こちらも季節によって内容が変わるそうです。
けんちん汁と香の物でほっと一息。甘味の「かりんとう饅頭」は、カリッとした皮の中から柔らかく蒸された栗が丸ごと入っていてなんとも贅沢。こちらも季節によって内容も変わるそうで、南瓜ぜんざいや、水羊羹、桜餅、山葡萄のシャーベットなど魅力的な甘味に、季節を変えてまた訪れてみたくなります。老若男女どなたでも楽しめるような味つけや内容の、里山ならではの季節のおもてなしにほっこりとした気分になりました。
都会の喧騒を忘れる非日常的で特別感のある空間と、その風景にフィットするお料理の数々が季節ごとに楽しめ、スタッフの笑顔と丁寧なおもてなしが心温まる「うかい鳥山」にはファンも多く、記念日や誕生日など、特別な日に訪れる方も多いそうです。奥高尾の隠れ里で美しい風景と、いろりを囲んだ地味深い里山料理をぜひ味わってみてください。
*価格は2024年12月1日のものとなります。変更になる可能性がありますので店舗にてご確認ください
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グルメライター 中村あきこ
グルメライター/日本とフランスの料理学校でフランス料理を学び、帰国後、都内フレンチレストランでサーヴィスに従事。マネージャーやウエディングプランナーを経験。また、料理とワインのマリアージュの素晴らしさに心が奪われた事をきっかけに、JSA認定ソムリエ、シニアソムリエを取得。お店に立つ側と食べる側、両方の視点から感じたものを、素直な言葉で綴り、そのホスピタリティを伝えている。現在は知人の店でヘルプシェフとしてキッチンに立つことも。二児の母。長男の育児中の食の悩みから、幼児食インストラクターを取得。親子で楽しく囲める食卓も日々研究中。
施設名 | うかい鳥山 |
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住所 | 〒193-0846 東京都八王子市南浅川町3426 |
TEL | 042-661-0739 |
営業時間 | 平日 11:30~14:30L.O.|17:00~21:00(18:30 L.O.) 土日祝 11:00~21:00(18:30 L.O.) |
定休日 | 火曜日(時期によって変動あり)、年末年始 (詳しくはホームページの営業カレンダーをご覧ください) |
公式サイト | https://www.ukai.co.jp/toriyama/ |
※最新の情報は公式サイトをご確認ください。