【特別編】 暮らすように過ごす古民家リノベーションのカフェとヴィラ あきる野市「POUND」&「紡舎」 | イマタマ

【特別編】 暮らすように過ごす古民家リノベーションのカフェとヴィラ あきる野市「POUND」&「紡舎」

2026/02/20

今回は、「特別編」として、あきる野市・戸倉にある古民家リノベーションカフェ「POUND(パウンド)」をご紹介します。

こちらの店は、「古民家カフェ」の特集や書籍などにも度々登場し、その雰囲気がカフェ好きの間では「隠れ家」のような存在として親しまれてきました。オーナーがほぼDIYでリノベーションしたという「ゆったりした内装」に、手入れされた「グリーン」と、「アンティークな家具や小物」がセンスよく配置され、どの席に座ってもリラックスした時間が過ごせます。

なぜこちらのお店をグルメ記事の「特別編」としてご紹介したいのかというと、

まずひとつは、訪れる人を自然とくつろがせてくれる、心地よい空間づくりのセンスにあります。そしてもうひとつは、このカフェが立地や周囲の環境と相まって、「ここを目指して出かけたい」と思わせる、旅の目的地のひとつになっているということからです。

さらに2025年5月には、カフェの開業を通して培ってきた古民家リノベーションの経験を活かし、オーナー自らが手がけた一棟貸しヴィラ「紡舎 」が誕生し、すでに多くの人の注目を集めているからです。

「食」をめぐる取り組みのひとつに、「フードツーリズム」という考え方があります。
ここPOUNDは「カフェ」というジャンルに位置づけられる場所ですが、その在り方や積み重ねてきた時間の中には、「フードツーリズム」として語られる要素や可能性が感じられます。

今回はそんな視点から、イマタマグルメの「特別編」として「POUND」をご紹介します。

大通りから一本入った場所にある隠れ家カフェ「POUND」

その土地へ訪れ 時間をすごすカフェ

JR五日市線武蔵五日市駅より西東京バス(檜原方面行きなど)約7分。戸倉バス停下車、徒歩約1分の場所に「POUND」はあります。昭和13年に建てられた、築85年の古民家をリノベーションしたカフェです。

引き戸を開いて店内に入ると、土間になっている広めの玄関で靴を脱ぎフロアに上がります。天井が高く、ゆったりと過ごせる店内の各所にソファ席やテーブル席、目の前に山の景色が眺められるカウンター席など、タイプの違う居場所がバランスよく配置され、好みの席で思い思いの時間を過ごすことができる工夫がされています。

白を基調とした、木の温もり感じる店内。アンティークな家具や小物類、窓から差し込むやわらかな光と、庭や店内に飾られたグリーンが優しく癒してくれます。この空間がオープン以来、多くのお客さまを惹き付けているのです。

一面ガラス張りの窓からは庭のグリーンが楽しめます

今回お話を伺ったのは、古民家リノベーションカフェ「POUND」のオーナー、岩田衣織(いわた いおり)さんです。岩田さんは奥様の玲子(れいこ)さんと共に、このお店を切り盛りします。

「妻が料理や焼き菓子を作り、私はコーヒーと接客を担当しています。実は二人とも料理人の出身ではないんですが、自分たちが食べ歩いて経験した、自分たちが納得する美味しさを提供することにこだわっています」。と岩田さんは話します。

床板は日の出町の製材屋で見つけた工事用の足場板を再利用。古材をリメイクしながらDIYされた店内

「自分たちが納得する美味しさ」。これはもともとライターとして活動されていた岩田さんご夫妻が、過去に海外で経験した「食の体験」に基づいています。

なかでも奥様の玲子さんは、中国や台湾、香港などで取材を重ね、さらに世界各地でも食や暮らしを取材してきた経験から、東西それぞれの文化や味に触れてきました。そんな中、2000年代半ば、岩田さんが30歳のときに、中国・浙江省杭州市にある大学へ二人で一緒に留学をします。

玲子さんは、すでに話せた中国語をさらに磨くため。しかし一方で岩田さんにとっては、中国語は全くのゼロからのスタートだったといいます。約半年の留学を経て、「もっと話せるようになりたい」という思いから、その後は現地就職を選びます。経験のあったライターの仕事をしながら、上海で生活を始めました。

現地では日本人向けフリーペーパーや、グルメ誌を発行する出版社で編集長を務め、中国語を使いながら取材・編集業務を担当していました。さらに、大手旅行会社の現地ライターとしてガイドブックの取材依頼を受けたことをきっかけに、上海を拠点に各地を回り、数百円で食べられるローカル食堂から、7つ星の超高級ホテルのレストランに至るまで実に幅広い取材をされたそうです。

地元のパン屋の湯ごね食パンと新鮮な卵を使った「ふわふわ玉子とハムの極厚サンド」1380円(ドリンク付き)ご主人の描くラテアートを楽しみに来店するお客様も多いそう

そんな上海での暮らしの中で、岩田さんご夫妻にとって印象が強かったのが「カフェ文化」でした。当時の上海には20世紀初頭の洋館や、煉瓦造りの古い集合住宅をリノベーションしたカフェやバーが流行っていて、そこは歴史と現代的な感性が融合した空間。また東洋と西洋が混ざり合う独特のカルチャーにとても惹かれたといいます。

地元の農家の野菜を使うキーマカレーやガパオライスなど食事のメニューもおすすめ

もともとカフェ巡りが趣味であるお二人は、上海から日本に一時帰国した際には、日本の田舎にあるカフェをよく訪れていたそう。その当時は「古民家リノベーション」のカフェが広まり始めた時期で、各地にもそういった場所が現れ始めていた頃でした。そんな中、「いつか自分たちもこういう場所を作ってみたい」という夢を持ち始めていたと話します。

窓から見える景色は都会の喧騒を忘れさせてくれるのどかな山の風景

そんな思いが少しずつ具体的なかたちになり、お子さんの誕生を機に日本に帰国。子育ての環境や将来の利便性を考え、東京郊外で自然豊かなあきる野市を選びました。そこで出会ったこの物件に強く惹かれ、ここでカフェを始めようと決めたのでした。

それまで数々の物件を見ていた岩田さんは、「武蔵五日市のこの家は、外観を見た瞬間に、ここだと感じました」と振り返ります。大工の経験こそなかった岩田さんですが、これまで気に入ったカフェに通いながら見聞きしてきた、さまざまな記憶と経験や、岩田さんが信頼を置く奥様の的確なセンスを手がかりに、住みながら少しずつ改修を重ねていきました。そして2018年、古民家リノベーションカフェ「POUND」が誕生します。

大通りから一本入った静かな場所にそっと佇むその建物は、ご夫妻の「探して来てくれる人に来てほしい」という思いを体現しています。

コーヒー好きの「POUND」オーナー岩田衣織さん お気に入りのイタリア製のエスプレッソマシーン「ラ・マルゾッコ」で入れるエスプレッソやラテもおすすめです

提供するメニューについては、中国・上海のカフェやレストランをはじめ取材先で出会った「食」を通じて、「本当に美味しいと思えるもの」を自分たちなりの基準で判断し、「この場所で体験してもらえる「素材」や「食べ物」をきちんとお客様に届けたい」という思いを大切にされています。

岩田さん夫妻の「理想のカフェ」は、空間やインテリアに加えて、そこに集う人も含め、はじめて完成するといいます。ここで心地よく過ごせる最大限かつさりげない空間づくり、そしてゆるやかな時間が流れる場所。それがご夫妻の「理想のカフェ」であり、「POUND」というカフェのあり方なのです。

岩田さんお気に入りのコーヒー豆は佐賀県を拠点とするロースター「Have a nice coffee.」が手がける「POUND 」オリジナルブレンド
店内のインテリアグリーンがいつも生き生きしているのは、奥様のおかげなのだとか。鉢植えの観葉植物は一部購入も可能。その他地元の作家さんが手掛ける小物類も販売されています。

森の中の一棟貸しヴィラ
「紡舎」で暮らすように泊まる

そんな「心地よくすごす時間」を、もっとゆっくり感じてもらうために、なんと2025年5月には、店から車で15分ぐらいのあきる野市深沢の地に、一日一組限定の一棟貸しヴィラ「紡舎」までオープンさせてしまいました。

あきる野市は、夏は秋川渓谷へのレジャーや観光に訪れる場所です。岩田さんは「ここまでわざわざ足を伸ばしてくれたのに、日帰りで帰ってしまうのはもったいない」と感じていました。

これだけ自然があり、空気がよく、心もほどける場所。美味しい飲食店もあるのだから、泊まる場所があれば、もっとゆっくり過ごしてもらえるのではと考えました。

収容人数最大6名 山に囲まれた広い庭にはバーベキュー台やグランピング用のテントもついた一日一組のプライベートな宿

さらに自分たちの得意とするのは、「古い建物を直し、そこに新しい価値を吹き込むこと」。そこで、一棟貸しというオペレーションスタイルであれば、カフェを続けながらでも実現できると確信し、宿の開業に踏み切りました。

物件探しを経て、岩田さんご夫妻が選んだのは、山あいの集落、深沢にある一軒の古民家です。行き止まりに近い静かな場所で、土地の時間がゆっくりと流れているような環境でした。

この場所は、明治初期に「五日市憲法草案」が発見された深沢家屋敷跡や東土蔵蔵の前に位置する、歴史を感じる場所でもあります。家の中に入った瞬間、太い梁と窓から差し込む光に心を奪われ、「ここならできる」と確信を持ち、ほぼ自分たちの手で約9か月かけて完成させました。

高級ホテルの1室のようなベッドルーム。ベッドはゆったり広いクイーンサイズ

土間の風情を生かした、打ちっぱなしのエントランス。一歩足を踏み入れると、広々とした室内全体を見渡すことができます。古い柱や梁の和の趣を残しながらも、北欧スタイルを取り入れた空間は、山奥に佇む古民家でありながら、都会的な洗練を感じさせる、大人のための世界。

開放的なリビングの中央に置かれたテーブルをやさしく照らすのは、繭のようなフォルムが印象的な照明〈MAYUHANA〉。日本人建築家・伊東豊雄氏によるデザインで、この空間に柔らかな印象を与えます。部屋の随所には国内外のアンティーク家具や小物を配置。
部屋を仕切るパーテーションやカーテンといったファブリックには、あきる野市の「真木テキスタイルスタジオ」による天然素材の手織り布が使われています。これらの上質な素材が、この空間の「静かな豊かさ」に彩りを添えています。

カウンターテーブル付きのキッチンには料理に必要な調理器具や食器類が完備されています

キッチンも完備されており、基本は自炊スタイル。食材は自分で用意することもできますが、せっかくなら、あきる野市周辺の「おいしいもの」を味わえる食材付きプランを利用するのがおすすめです。

朝食には、地元ベーカリーのパンや平飼い卵、顔の見える農家が育てた野菜を。夕食には、地元のソーセージや東京和牛、東京X、鮎など、多摩の恵みが揃います。用意された食材は、庭に設えられたコンロで、バーベキュースタイルとして楽しむことも可能です。

またオプションで、地元農家や精肉店、酒蔵を巡り、食材を集めて夕食をつくる体験型の「ガストロノミーツアー」もオーダー可能。地域の文化や人にふれあいながら「食」と「旅」を同時に楽しめるツアーも用意されています。

さらに、宿泊客へは近隣の提携レストランへの送迎も行っています、車で来るとお酒が飲めない立地の地元の名店でも、安心してお酒を飲んで食事を楽しみここで宿泊することができます。

冷蔵庫の中には地元酒蔵の日本酒やクラフトビール、ワインなどが冷えています

宿泊費は、1棟6人まで利用可能で6万円(税別)〜。オープンして約半年ですが、すでにカップルやファミリーはもちろん、最近では海外からの旅行者も多いそうで、都心からアクセスしやすいにも関わらず、自然に囲まれた山あいで「暮らすように泊まる」というスタイルで旅を求める人たちが、訪れています。また、テレビやCMの撮影でも使われる宿となっています。

「POUND」が「ここに行きたいから訪れるカフェ」であるように、「紡舎」もまた「ここに泊まりたいから訪れる場所」になっているのです。岩田さんは、「観光のために泊まるではなく、泊まるために来る場所にしたかった。『この宿に泊まってみたいから行ってみよう』『泊まってみたら、近くにこんな体験があるからこれもやってみよう』。そんな流れが生まれる場所をつくりたかった」といいます。

古民家リノベーションのカフェ「POUND」と、一棟貸しヴィラ「紡舎」。派手な観光ではありませんが、山の景色と澄んだ空気、地元のごちそうとともに、ゆったりとした時間を味わう贅沢がここにはあります。「暮らすように過ごす」。そんなひと時を楽しみに、あなたもあきる野へ出かけてみませんか。

庭にはグランピング用のテントも完備、バーベキューも楽しめます

施設名:紡舎(ぼうしゃ)

住所:東京都あきる野市深沢520

TEL:090-2004-3249

ホームページ :https://bo-sha.com

グルメライター 中村あきこ 

グルメライター/日本とフランスの料理学校でフランス料理を学び、帰国後、都内フレンチレストランでサーヴィスに従事。マネージャーやウエディングプランナーを経験。また、料理とワインのマリアージュの素晴らしさに心が奪われた事をきっかけに、JSA認定ソムリエ、シニアソムリエを取得。お店に立つ側と食べる側、両方の視点から感じたものを、素直な言葉で綴り、そのホスピタリティを伝えている。現在は知人の店でヘルプシェフとしてキッチンに立つことも。二児の母。長男の育児中の食の悩みから、幼児食インストラクターを取得。親子で楽しく囲める食卓も日々研究中。

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DATA

施設名 POUND (パウンド)
住所東京都あきる野市戸倉208−2
TEL042−588−5797
営業時間平日 11:30〜16:30
土・日曜日 11:30〜18:00
定休日火・水・木(祝日の場合も休み)
*ラストオーダーは閉店時間の1時間前(早じまいの場合もあり)
公式サイトhttps://www.pound.tokyo
備考SNS:https://www.instagram.com/pound_cafeandgreen/

※最新の情報は公式サイトをご確認ください。

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