【八王子市】日本全国の桜を楽しめる国内唯一の施設「多摩森林科学園・サクラ保存林」 | イマタマ

【八王子市】日本全国の桜を楽しめる国内唯一の施設「多摩森林科学園・サクラ保存林」

2023/04/11

お花見とはひと味違う、研究施設ならではのサクラ鑑賞がおすすめ

JR中央線高尾駅北口を出て真っすぐに進み、坂道を上ること約10分のところに「多摩森林科学園」があります。都立高尾陣馬自然公園の中に位置し、ここには、栽培品種から名木、古木に至る日本全国の主要なサクラが植樹されている「サクラ保存林」があります。

全国のサクラが見られる圧倒的な保存林

1921年2月に、宮内省帝室林野管理局林業試験場として発足し、現在では、国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所の支所のひとつとして、森林、林業、木材産業に関わる管理や利用技術の開発、動植物の多様性の保全、生態系の解明などの研究を行っています。1980年代頃から、日本各地で公害や害虫などの影響を受けたサクラの名木、古木が見つかり、サクラを日本の文化遺産として残すために、この施設と自然環境が選ばれました。

多摩森林科学園入口

そして、江戸時代以前から伝わる栽培品種や天然記念物に指定されたサクラや在来品種のサクラなど、接ぎ木にする穂木(ほぎ)を採取して接ぎ木苗を育て植栽していきました。現在、約8haのサクラ保存林では、500系統、約1,800本のサクラを見ることができます。また、同じ敷地内には、他では見ることのできない貴重な樹木を含む約500種、約3,500本を有する樹木園や多様な植物、動物、昆虫なども観察できる魅力的な自然が広がります。

パンフレットには施設情報と園内マップが充実

今回、多摩森林科学園の真壁さんと菊池さんにお話を伺いました。

この研究所では、サクラの植生の継続的観測、開花時期の記録、DNA分析によるクローン性、品種と名前の分類などサクラに関する様々な研究が日々なされています。その中で、面白い逸話をいくつか伺うことが出来ました。

たとえば、サクラ保存林は、標高200m前後の山地にあり、細かなものから傾斜30°の急斜面の谷にも広がっています。ある年の台風で山が崩れることによって谷が出来、斜面が形成され、植栽用の土地になったそうです。サクラの品種によっては、高い標高や斜面や水はけ、土壌との相性などから、移植された土地に合わず育たなかった品種もあったそうですが、場所を変え、再度移植することで育成を続けているそうです。こういった経過も、データを残して調査の一環となります。

また、サクラは、栽培品種が沢山あり、その土地だけの野生種があるなど、多様な植生を持つため、違う名前がついていても遺伝子が同じだった、またその逆もあるなど、同名異種や異名同種のサクラも発見されるそうです。他にも、日本では絶滅していたと考えられていた品種がイギリス人の個人の庭で見つかったとか、2016年には多摩森林科学園の研究者が、紀伊半島の沿岸で自生するクマノザクラという新種のサクラを発見するなど、栽培品種や全国の野生のサクラの分類にも大きく貢献しています。

それぞれに姿形が違うサクラの花

ぜひ、サクラ保存林と樹木園を歩いてみて欲しいと思っています。実際に見ると、一重、八重、菊咲などの花弁の形、枝垂や箒状などの枝ぶり、葉の出方・付き方、開花時期、花の大きさや色味など、どのサクラも同じではないし、こんなにも沢山の種類があることがよく分かります。丁寧に描かれた説明板を読みながら、このサクラはこの品種とこの品種の交配だったのかとか、実際に歩いてみてこそ分かる発見が沢山あると思います。研究施設だからこそ楽しめる貴重なサクラの里です。開花時期は品種によって違うので、何度か足を運んでみるのもいいかもしれません。

研究施設ならではのサクラの交配種や特徴、歴史背景なども充実
サクラ保存林の風景。開花時期が違うので景色も変わる

そして、ここには、サクラとともに育つ多種多様な樹木と植物があり、また、チョウ、トンボ、カミキリムシなどの昆虫、ミヤマホウジロ、ツグミ、メジロなどの野鳥も観察できるスポットでもあります。ムササビや二ホンリス、二ホンジカ、イノシシなどの動物なども生息し、自然の多様性と素晴らしさを体感できる場所でもあります。

園内では昆虫や鳥にも出会えるかも

多摩森林科学園の門を入ると、目の前に「森の科学館」があります。1階では、サクラの基礎知識とサクラの花のレジン標本があり、じっくりと品種ごとの花の様子が観察できます。また、動物や鳥の剥製、骨などのディスプレイと一緒に、生態系の変化が分かる展示パネルも充実しています。2階には、森林総合研究所の研究内容が紹介されていて、樹木から出来るお酒や木工製品、木の家など、樹木が私たちの生活にどう関わっているのかを改めて知ることが出来ます。

森の科学館

園内は、歩道はきちんと整備されていますが、標高200mほどの山ですので、登り下りがかなりあります。すべて回るには1時間から3時間はかかるほどですので、しっかり歩ける靴を履いてお出かけください。また、無料の園内ガイドツアーもあります(サクラの季節にはツアーは休止しています)ので、サクラの季節はもちろん、一年を通して、多様な動植物の生態が楽しめます。

園内にはベンチやトイレも整備されているのでゆっくり楽しめます
スミレ。足元の植物を探すのも散策の楽しみ

DATA

施設名 森林総合研究所 多摩森林科学園
住所東京都八王子市廿里町1833-81
TEL042-661-0200(森の科学館/お客様専用番号)
営業時間9:30~15:30
定休日毎週月曜日(3月~5月5日までは無休)

月曜日が休日に当たる場合はその翌日
12月26日~1月6日
料金4月:大人400円 子ども150円
5月~3月:大人300円 子ども50円
園内ガイドツアー:無料
公式サイトhttp://www.ffpri.affrc.go.jp/tmk/index.html
アクセスJR高尾駅北口から徒歩10分
京王線高尾駅(JR高尾駅北口出口)進行方向左側の歩道をお進みください。

JR高尾駅北口1・2番乗り場から西東京バス乗車(小仏行きを除く)「森林科学園」下車(約3分)高尾駅方面(帰り)のバスはございませんので、ご注意ください。
駐車場なし

※最新の情報は公式サイトをご確認ください。



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