体に優しいスローチャイニーズフードを目指して20年目へ 西東京市「墨花居」田無店 | イマタマ

体に優しいスローチャイニーズフードを目指して20年目へ 西東京市「墨花居」田無店

2023/10/31

こんにちは、特派員中村あきこです。秋から冬へと向かうこの季節。
美味しい旬の食材に寄り添うワインを合わせて舌鼓。最高ですね!

この時期は、新酒と言われるできたてのワインや日本酒が酒屋の店先や、飲食店のメニューに並びます。ワイン好きが真っ先に思い浮かぶのはフランスの「ボージョレ・ヌーヴォー」。11月の第三木曜日。午前零時の乾杯は毎年の恒例行事となっています。

ボージョレヌーヴォーだけでなくこの季節に解禁となるワインが他にもあるのをご存知でしょうか。10月30日解禁のイタリアの「ヴィーノ・ノヴェッロ」や、11月1日ドイツの「ディア・ノイエ」、11月11日オーストリアの「ホイリゲ」など、この時期には熟成を待たずとも楽しむことができる、出来立てのワインが日本に届くのです。

また11月3日には日本の「山梨ヌーヴォー」も解禁されるので、ちょっと足を伸ばして現地で乾杯するのもいいですね。そんな果実味溢れるフレッシュなワインに合わせて、どんな食材をチョイスして、どんな調理法にしようかなどとを考える時間はまさに食欲の湧くひと時です。

今回取材させていただいたのは、シェフとソムリエが織りなす中国料理とワインのマリアージュ、西東京市田無で長く愛されている人気のチャイニーズレストランです。丁寧で心地の良いサービスとともに、旬の野菜を使った体に優しく飽きのこない中国料理が楽しめます。ぜひ一度ご賞味ください。

ワインソムリエのいる中華料理レストラン

西武新宿線田無駅から徒歩7分。「ふれあいの小道」という裏路地にある青い屋根付きテラスが目印の「墨花居」


田無を拠点にカフェ、パティスリー、レストランなどを運営する、株式会社武蔵野テーブルの第1号店でもあるスローチャイニーズレストラン「墨花居」は2024年でなんと20周年を迎えます。

飲食店がその場所で長く愛され営業を続けるということは、そのお店や企業の努力はもちろんのことですが、ただそれだけではどうにもならない要因もあり、なかなか思うようにはいかないものです。

私がこれまで働いていた飲食店でも、様々な理由で営業を続けていくことが難しくなったことがありました。しかしながら提供する商品、味、価格などがその地域や立地とマッチしていることや、工夫があること。またその店で働くスタッフたちの環境や努力、意気込み、お客様へのホスピタリティーの良さなどは、長く愛されるための秘訣であることは間違いないかと思います。

爽やかで心地の良い「いらっしゃいませ」と「ありがとうございました」の声が代わるがわる聞こえてくる、活気あるランチタイムのエントランスは、言わずもがなここが人気店であることが伝わってきます。

厨房が見えるメインフロア。営業中はライブ感のある風景が食欲を湧きたてます
カーテンで間仕切りされた半個室の席もありゆったりと落ち着きます

ドアを開けエントランスから見えるのは、ガラス張りになった厨房。その中で中華鍋を艶やかに揺り動かす料理人の光景はライブ感があり、見ているだけでお腹が空いてきます。

壁に描かれた水墨画や絵画など、高級感のある中国の雰囲気を出しつつも、和を基調とした店内はほっと落ち着きます。店内は100席近くもあるそうですが、柱や壁をうまく利用し、どの席でもゆったりと落ち着いて食事ができそうです。

その中でもカーテンで間仕切りされた半個室のような円テーブルの席は、とっておきの日に利用したい特別感がありました。間仕切りを取ると大勢で利用することができるので、貸切パーティーなどの利用もできるそうです。

間仕切りがあることで法事やお祝い、子連れでの利用に人気だそう
ワインを注いでもらっている間のちょっとした会話も楽しく笑顔になります

フロアでは、はきはきとした口調と丁寧な接客で説明やサーブをするスタッフ達が、忙しくも笑顔で楽しげに動き回っているのが印象的で、時折聞こえてくるお客様とスタッフのやりとりにアットホームな雰囲気も感じられました。
カジュアルすぎない、程よい高級感の中、肩肘を貼らなくて良い居心地の良さがここにはあります。

野菜ソムリエの提案する中華料理

『旬の野菜が美味しくいただける贅沢』をコンセプトに、化学調味料は一切使わないスローチャイニーズレストラン「墨花居」。麻婆豆腐や、海老チリソース、担々麺など中華の定番料理以外に、彩り豊かな旬の炒め物や、シェフオリジナルの独創的なお料理も楽しむことができます。

オープン直後からこの店の味を支える、株式会社武蔵野テーブル取締役の小西出勇(こにしで いさむ)さんに、この店のお料理の特徴やお店作りについて伺ってみました。

北京料理は餡が軽くさらっとしているのが特徴。週替わりのランチセット(1,485円 税込)では旬の炒め物が楽しめます

小西出さんは調理師学校卒業後、ミシュラン2星の獲得経験を持つ「赤坂 桃の木」のオーナー小林武志氏のもとで修業、その後中国本土へ渡り、本場の中国料理を学んだそうです。

また帰国後には、中国料理調理師の最高位である特急厨師という資格を持つ北京出身のシェフが店を出す際に、オープニングスタッフとして声をかけられ、そこでは「墨花居」のベースともなる北京料理について多く学んだそうです。

そんな小西出シェフが作り出す化学調味料を一切使わないスローチャイニーズは、オープン当初は一般的ではなく、軌道に乗せることにとても苦労されたそうです。

店の味の決め手となるスープは、贅沢に鶏肉100%だと言います。もちろん原価はかかりますが、塩を加えるだけで繊細で旨みのある体に優しく飽きのこない味が出来上がるそう。

また発酵食品で旨みをアップさせるなどの工夫もあるそうで、「不安定なこともありますけど、そこは絶対にブレないようにしています」。と自信を持ってお客様に提供されています。

使用する油は精製度と鮮度にこだわり、油っこさを感じないよう気をつけているそう。「うちの炒め物は翌日胃もたれしないんですよ」。と小西出さん。

中国料理では炒め物をする際、素材を一度油通しします。その作業は一日に何度も繰り返されます。その何度も使用した油を炒め油に使用すると酸化してしまうので、炒める前には必ず鍋を一度洗い新しい油で炒めるます。

また一般に中華料理店で使用される白締油(しらしめあぶら)は重たさを感じるので使用せず、精製度が高いサラダ油を使用して軽く仕上げるそうです。

海老のチリソース炒めはぷりっぷりのエビが堪りません。餡が軽いのでさらりと食べられます

日本野菜ソムリエ協会認定の「ジュニア野菜ソムリエ」の資格を持つ小西出さんは、「切り方や火入れの仕方も野菜によって全て違います」。と話し、野菜の油通しをする順番も秒単位で変えているとのこと、確かにどの野菜も食感が良く仕上がっていることに納得です。

地元田無や、東久留米の遠藤農園という契約農家の新鮮で野菜を使っていると、そのこだわりの数々を話してくださいました。手間を惜しまず、細やかな心遣いが感じられる「墨花居」の料理。老若男女、幅広い世代から長く支持される理由がここにあるのです。

料理に花を添えるサービスの存在

どんな素晴らしいお料理も、その内容や良さをお客様に伝えることができなければ、その良さは半減してしまいます。そこで鍵を握るのが厨房とお客様を繋ぐ役となるサービススタッフの存在です。小西出さんは「フロアのサービスにも是非注目してもらいたいです」。と、店長の濱野友里(はまの ゆり)さんを紹介してくださいました。

株式会社武蔵野テーブル取締役の小西出 勇(こにしで いさむ)さん(左)
「墨花居」田無店の店長濱野友里(はまの ゆり)さん(右)

2022年の1月から「墨花居」の店長に抜擢された濱野さんは、以前は系列店のイタリア料理「武蔵野食堂」でサービススタッフとして働いていました。

ある日そのお店のお料理とワインを試飲、試食するという勉強会があり、その時に触れた料理とワインの組み合わせ(=マリアージュ)に感激し、ワインに興味を持った濱野さん。それまではお酒自体あまりなかったそうですがマリアージュの楽しさに惹かれ、ソムリエへの道を目指したそうです。独学の末、見事一発合格。驚きです!

キビキビとした立ち居振る舞いと、丁寧に接客する姿は見ていてとても気持ち良く感じます。

また料理説明も的確で、一見ではわからない素材や調理の工夫などを一言添えてくれることにより、一層その料理が引き立ちます。
お客様と厨房を繋ぐスタッフの存在。これが安心感のあるサービスにつながっているのだと感じ、ここにもお店が長く愛される秘訣がありました。

お店の中に貼られた親しみやすさを感じる手作りのPOPも販売促進に一役買っています

「中国料理 × ワイン」という新しい体験

さて冒頭でも少し触れましたが、ここ「墨花居」ではお料理に合わせたおすすめのワインを楽しむこともできます。

「中国料理×ワイン」という新しい体験をしてほしいと、小西出シェフとソムリエ店長の濱野友里さんがタッグを組み。試飲を繰り返し料理と相性の良いワインを選び、1杯から注文できるグラスワインとして気軽に楽しんでもらえるような取り組みをしているそうです。

今回おすすめいただいたのは、旨辛で人気の「特製麻辣麻婆豆腐」とフランス南西地方の赤ワイン「カオール」とのマリアージュです。

「麻辣(マーラー)」とは花椒と唐辛子を組み合わせた舌が痺れる旨辛さが人気の味。一口目は麻婆豆腐だけ口に運び、パンチのある唐辛子の辛さと、舌の上がヒリヒリするような痺れを味わいます。

もちろんこのままでもあと引く辛さが美味しくて癖になりますが、そこで赤ワインを一口。するとさっきまでのヒリヒリ感が和らいで、麻婆豆腐のソースの旨みと、ワインの果実味がふわっと口に広がります。これは私も初めて体験する面白い組み合わせであり、この一皿がさらに引き立つことにとても感動しました。

この「カオール」というワイン。別名黒ワインとも呼ばれる色の濃い赤ワインです。ワイン単体での味わいは、渋みは穏やかで、ほんのりビター。やや重さを感じます。しかしながらこの旨辛の麻辣麻婆豆腐と合わせると苦味よりも果実味が優先されてその印象がガラッと変わりました。

このように、料理とワインの組み合わせは時に想像を超えた味わいになることがあり、新しい発見に驚き感動することがあります。こうしたお店側からの提案は食べる側にとって楽しみであり新鮮です、きっとまた来店したいと思えるきっかけにもなるのではないでしょうか。

痺れる辛さが人気の特製麻辣麻婆豆腐のランチセット(1,430円税込)ソムリエおすすめの赤ワインとのマリアージュ
口の中でトロリととろける「とろける杏仁豆腐」は程よい甘さとクリーミーさで食後の口の中をリセットしてくれます

食欲の秋。旬の野菜を取り入れた、体に優しいスローチャイニーズ「墨花居」で、シェフとソムリエが提案する、ワインと中国料理のマリアージュや、心地よいおもてなしを堪能してみてはいかがでしょうか。

グルメライター 中村あきこ 

グルメライター/日本とフランスの料理学校でフランス料理を学び、帰国後、都内フレンチレストランでサーヴィスに従事。マネージャーやウエディングプランナーを経験。また、料理とワインのマリアージュの素晴らしさに心が奪われた事をきっかけに、JSA認定ソムリエ、シニアソムリエを取得。お店に立つ側と食べる側、両方の視点から感じたものを、素直な言葉で綴り、そのホスピタリティを伝えている。現在は知人の店でヘルプシェフとしてキッチンに立つことも。二児の母。長男の育児中の食の悩みから、幼児食インストラクターを取得。親子で楽しく囲める食卓も日々研究中。

DATA

施設名 墨花居(ぼっかきょ) 田無店
住所西東京市田無4-24-1
TEL042-451-8852
営業時間11:30~15:00(料理L.O. 14:30 ドリンクL.O. 14:30)
17:00~21:00(料理L.O. 20:00 ドリンクL.O. 20:30)
定休日月曜日(月曜が祝日の場合は翌日振替)
公式サイトhttps://bokkakyotanashi.owst.jp/

※最新の情報は公式サイトをご確認ください。



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