立川の隠れ家「F.あら井」鮨完全予約の鮨店で愉しむ贅沢時間 | イマタマ

立川の隠れ家「F.あら井」鮨完全予約の鮨店で愉しむ贅沢時間

2024/07/23

こんにちはグルメライター中村あきこです。

今年は6月から真夏のような暑さの日が続き、梅雨入りが遅かった上に、未だ各地で災害級の大雨が降るなど不安定な気候が続いています。こうした気候変動によって、農作物や海産物の収穫時期がずれてしまうなど、食材の「旬」に影響を与えます。

「旬」とはその食材が出回る時期のことで、美味しく、栄養価も高いので、その季節を乗り越えるためにも旬の食材を取り入れることは大切なことです。夏野菜を例に挙げても、きゅうりや茄子、トマトなどは、水分やカリウムを多く含み、夏バテ予防に効果があります。

また旬の中でその食材が多く出回る時期を「さかり」と呼び、出始めのものを「はしり」と呼びます。特に「はしり」というのは、その食材がまだ安定して収穫される前なので、市場での価格が高いのですが、日本では昔から「初物は縁起が良い」とされるので人気があります。そんな中でもまさに今が旬であり、また希少な江戸前鮨のネタである「新子(シンコ)」をご存知でしょうか。

シンコとは、コハダの幼魚で、丁寧に仕込まれたそれは、通を唸らせる繊細な味わいで、経験を積んだの鮨職人の技の見せ所とも言われるそうです。シンコは、コハダ、ナカズミ、コノシロと成長する出世魚ですが、コハダのサイズ(8センチくらい)に育つまでのわずかな時期(7月〜8月)を味わいます。

1匹が3〜4センチほどと小さいため、一貫あたり4〜5匹は使うそうで、今年の初物はなんと1キロあたり12万円もしたそうです。「はしり」の後は徐々に値段は下がるものの、タイミングを逃すとすぐに大きくなってしまうのです。

さて、今回は立川市錦町にある完全予約制の鮨の名店「F.あら井」さんを紹介ます。

「F.あら井」鮨は、経験豊富な匠の鮨職人が織りなす、旬のお料理と握りが楽しめる、多くのファンを持つ鮨店です。

多くのファンに愛される一期一会のおまかせコース

JR中央線 立川駅から約10分。雑多な駅前を少し離れた場所、錦町のウィンズ通り沿いに、ひっそりと門を構える一軒家の鮨処「F.あら井」。しっとりとした佇まいの数寄屋門をくぐり、涼しげな小笹の細道を奥に進みます。

一歩敷地に入ると自然と背筋が伸びてしまうような、凛とした雰囲気を持つアプローチ

「いらっしゃいませ」と扉が開き、スタッフがお出迎え。趣ある店内に少し緊張しながら、ゆったりとした一枚板の檜のカウンター席に着きます。

カウンター越しにいらっしゃるのがこちらのお店のオーナー、新井二三男(あらいふみお)さん。高校卒業後、大阪の調理師専門学校に進み、学生時代は割烹で和食の基礎を学び、その後は老舗鮨店の実家に戻り家業を継ぎ、2017年独立。「F.あら井」を開業されました。

こちらのお店は、元々は紹介制でなかなか気軽に訪れることはできなかったのですが、現在は「完全予約制」のお店として、電話や専用サイトからの予約が可能となりました。

また地元の人を大切にしようと、立川市の「プレミアム婚姻届」を出されたご夫婦へは、結婚記念日にワインを1本プレゼントするサービスも行っています。

「わからないことがあればなんでも聞いてください」と常にお客様を気遣う新井さんに緊張もほぐれます。そんなお人柄に惹かれて通われるファンも多いそう

匠の手仕事が間近に見られるカウンター席がおすすめ

隠れ家のような一軒家の店舗は、匠の技や手仕事を間近に感じられるカウンター8席と、プライベートで利用できる4名用、8名用の個室が2部屋。すべて完全予約制で、お昼は、笹らぎコース3,300円と、えふコース5,500円。夜は、おまかせコース13,200円〜を提供されています。(すべて税込・サービス料別)。

今回ご紹介したいのは「夜のおまかせコース」です。このコースは、料理6品・握り15貫の、移りゆく季節を感じる旬の食材を用い趣向を凝らしたお料理と握りなど「F.あら井」の醍醐味を全て堪能できるコースとなっています。

「締める」「煮る」など素材に仕事を加えてから握る江戸前鮨は職人の個性が光ります

食前酒にビールをいただき喉を潤したところで、先付にいただいたのは「ウマズラハギの肝和え」。程よい歯応えのある身とまろやかな肝の風味に、ピリッとしたカラシがアクセントに加わり、ビールが進みます。

先付の後には「おしのぎ」として、ちょっとしたご飯ものが出されます。これは懐石料理の様式になりますが、「空腹を凌ぐ」という意味で提供されるそうで、手のひらに収まるサイズの笹寿司が供されます。

この笹寿司は、立川の名産品の東京うどを使った、登録商標「笹らぎ」というお土産用のお鮨で、全国配送もしている人気の商品です。〆さば、サーモン、小鯛、煮穴子、海老の5種類あり、お好みを一つ選べます。うどのシャキシャキ感が、しっとりと馴染んだネタと酢飯のアクセントとなり美味。思わず顔がほころんでしまいます(テイクアウトは要予約)。

ビールがなくなると、料理に合わせて山口県の日本酒「雁木 純米吟醸」をおすすめいただきました。こちらは酢飯との相性も良く、優しい甘味が口いっぱいに広がります。

続いて出された「鯨のお刺身」は、見た目も味わいもお肉の赤みのような濃厚な風味で、ごま油を絡めてあり、まるで「ユッケ」のような食感です。こちらを生姜醤油でいただきました。日本酒と一緒に口に含むと、旨みと甘みが見事に調和し、幸せなため息が出てしまいます。

その他、季節ものとして「蓼酢」でいただく「鮎の塩焼き」など、数々お料理をいただいたところでいよいよ握りへ。手のひらをポンと打ち鳴らし、一貫ずつ提供されるその光景をカウンター越しに見ていると、美しくて見惚れてしまいます。

自ら市場に出向き、信頼のおける業者から仕入れているというマグロ、白身魚、貝、光り物などを種類豊富に揃えているそうです。旨味の詰まった昆布締めの鯛や、とろけるような生鯖、目の前できゅ〜っと動く新鮮な赤貝や、活け締めの穴子を使った煮穴子など、一貫ごとに感動を味わえます。

夏を感じる「鱧の梅肉和え」や「手作りの胡麻豆腐」お出汁の効いたとろみ餡のかかった「茶碗蒸し」まろやかな風味の「赤だし」にほっこりしたところで、最後にパリパリの海苔でさっと巻かれた赤貝の「ひもきゅう巻き」をいただくと、もうお腹は大満足。最後に「甘味」が登場。満腹ながらもこちらは別腹で、するっと収まってしまいました。

「お腹はいっぱいになりましたか?」と、気遣ってくださる新井さん。素材の質、味やその見た目はもちろんのこと、充実した内容やボリュームは、まさにお値段以上です。「ときめき、感動、満足」それが新井さんのポリシーなのだそう。趣のあるしつらえや、一つ一つのお料理にときめき、その味わいに感動し、食後の余韻と満足感に嬉しくなってしまう。そんな時間がここにはあります。

今回私がいただいた「夜のおまかせコース」はこのような内容ですが、その時の仕入れや、季節によって食材も変わるそうなので、その時々で工夫を凝らしたコースが味わえるとのこと。また全ての仕込みから提供までの作業を、新井さんお一人で賄われているため、「完全予約制」というスタイルで営業されているのだそうです。

お昼も完全予約制で、3,300円(税込・サ別)の笹らぎランチと、えふコース5,500円(税込・サ別)品数、内容共に充実のお食事が楽しめます

鮨店の美味しいお茶へのこだわり

茶道をたしなみ、「いい鮨にはいいお茶が必要。お茶でおいしさも変わる」という「F.あら井」では、提供する「お茶」にもこだわっています。提供するのは、立川市羽衣町にある「狭山園」の日本茶ソムリエが選んだ上質な狭山茶。緑茶、玄米緑茶、ほうじ茶、和紅茶の4種のお茶が厳選した日本酒などとともに、ドリンクメニューの中にラインナップされています。

緑茶、玄米緑茶、ほうじ茶、和紅茶と全部で4種類(各630円 税込み)

同店では、温かいお茶も冷たいお茶も1杯分で注ぎ切る湯量を急須で提供します。「お湯が残っていると渋みが出てしまうので、しっかり最後まで注ぎ切ると2杯目も美味しくいただけるんですよ」と新井さんは話します。

2杯目以降はまたお湯を継ぎ足してもらえ、3杯くらいは十分美味しく楽しめます。これからの暑い季節は水出し茶も提供。氷の入ったロックグラスに、ガラス製の急須から水出しの緑茶を提供してくれます。なんとも涼しげな翡翠色で、一口飲むとお茶の甘みが口いっぱいに広がります。そんなおもてなし一つでお茶に対する意識も変わります。

新井さんは、「鮨店のお茶は無料という発想を変えていきたい。お茶には、生産者、お茶屋、問屋とさまざまな人が関わり、こだわりと情熱が詰まっています。お茶も料理。そんな食文化の価値を広めていきたい。こういう取り組みを何軒かが始めると、広がっていくのでは」と語ります。

狭山茶は、日本三大茶と呼ばれる「静岡・宇治・狭山」のうちのひとつです。こういった取り組みのおかげで、お茶に興味を持つ方も増え、最近は和紅茶に興味を持ち注文される方も増えているのだそうです。

お茶も大事なおもてなしであり、料理を引き立てるもののひとつです。ドリンクメニューに載せ、お客様の選択肢の一つに組み込み、有料で提供することが理解できます。

私たち多摩地域のグルメファンも、地元で日々おいしい料理を堪能するために、地元の飲食店、さまざま食材を提供する生産者を守っていきたいと考えます。

そこまで意識を持つと、多摩地域が「食材が豊富」で、「心意気のある料理人や店が多く」、それを理解し、食を愉しむ「グルメファンがいる」、日本でも有数の「グルメエリア」になるかもしれませんね。「F.あら井」でお鮨とお茶をいただきながら、そんなことを考えました。

熟練された技術と多くの経験で、立川の飲食業界を牽引してきた匠の店「F.あら井」で、

一期一会の「価値ある贅沢」を楽しんでみてはいかがでしょうか。

急須などの茶器にもこだわるおもてなし。温かいお茶はこちらの1人前の急須で提供されます。苦味や渋みがないほうじ茶は食中にいただくのにぴったりしました

グルメライター 中村あきこ 

グルメライター/日本とフランスの料理学校でフランス料理を学び、帰国後、都内フレンチレストランでサーヴィスに従事。マネージャーやウエディングプランナーを経験。また、料理とワインのマリアージュの素晴らしさに心が奪われた事をきっかけに、JSA認定ソムリエ、シニアソムリエを取得。お店に立つ側と食べる側、両方の視点から感じたものを、素直な言葉で綴り、そのホスピタリティを伝えている。現在は知人の店でヘルプシェフとしてキッチンに立つことも。二児の母。長男の育児中の食の悩みから、幼児食インストラクターを取得。親子で楽しく囲める食卓も日々研究中。

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DATA

施設名 F.あら井
住所立川市錦町1−6−7
TEL042-519-3419
営業時間日・月・火・金・土曜日 12:00~ / 17:00~
木曜日は夜のみ 17:00~
※最終入店13:00まで
※夜の最終入店は19:30まで
定休日水曜日
公式サイトhttps://sasaragi.tokyo/farai/
備考※お昼のコースは限定10食

※最新の情報は公式サイトをご確認ください。



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