こんにちは、イマタマグルメ ライターの中村あきこです。「西洋料理」と聞くと、どんなイメージをお持ちでしょうか。テーブルマナーやドレスコードが必要で、特別な日の食事を思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし西洋料理は、日本料理や中国料理と並ぶ大きな料理ジャンルの一つ。フランス料理やイタリア料理を中心としたヨーロッパ発祥の料理で、高級レストランからビストロやトラットリアのような気軽なお店まで、実に幅広いスタイルがあります。
今回ご紹介する『ほんだ食堂』は、ちょっと特別感があるイメージの西洋料理を、「もっと身近に楽しんでほしい」。そんな想いから生まれた一軒です。店を営むのは、プロの料理人の原点を支える調理師学校で、28年にわたり西洋料理を教え、国内外の飲食業界で活躍する多数の料理人を送り出してきた、本田 孝成(ほんだ たかあき)シェフ。
長年培ってきた西洋料理に対する想いと技術を活かし、都心ではなくここ日野で目指したのは、特別な日だけに訪れるレストランではなく、普段着でもふらっと立ち寄れて、本物の西洋料理の魅力が味わえる場所でした。奇をてらわない基本に沿った美味しいものを、肩肘張らずに楽しめる。そんな『ほんだ食堂』の魅力をご紹介します。

ビストロでもなく、トラットリアでもない
ジャンルの垣根を超えた「身近な西洋料理」
東京都日野市、JR中央線 豊田駅北口に広がる多摩平の森エリアに『ほんだ食堂』はあります。
再開発で整備された街並みにはイオンモールや、マンション群が並び、その大通り沿いをまっすぐ進むこと徒歩約8分。マンションの1階、和食店などが軒を連ねるその一角は、外階段を下りる半地下の造りになっています。
『ほんだ食堂』の看板を見つけ階段を下りると、ミントやタイムなどのハーブが植えられた自家菜園のコンテナが並び、入り口のガラス戸越しからは、店内の雰囲気が伝わってきます。扉を開けると、「いらっしゃいませ」と、オーナーシェフの本田さんがオープンキッチンから顔を覗かせ、迎えてくださいました。

2025年10月にオープンしたこちらの店は、前店舗から居抜きで引き継いだ空間を、専門業者の手も借りながら、本田シェフもDIYの特技を活かし、壁やキッチンに手を加え、店内を一新。キッチンに面した5名掛けのカウンター席と、最大6名掛けのテーブル席を備えた奥行きのある空間。シェフ自ら漆喰を塗って仕上げたオフホワイトの壁が、シンプルで落ち着いた雰囲気を演出しています。
壁にはその日おすすめのメニューやワインが手書きされています。あえて日本語に訳さず料理名のまま記されたメニューもありますが、「わからないものがあれば気軽に聞いてください」と本田シェフ。
またコックコートではなく、ラフなTシャツ姿でキッチンに立つシェフの姿からも、「肩肘張らず気楽に過ごしてほしい」という想いが伝わってきます。『ほんだ食堂』という温かみのある店名通り、アットホームで、自然と肩の力を抜いて過ごせる空気感がそこにはありました。
席について一息ついたところで、「まずはこちらをどうぞ」とこの日のお通し「スープ・ド・ポワソン」が提供されました。スープ・ド・ポワソンとは、直訳すると「魚のスープ」。フランス マルセイユの郷土料理「ブイヤベース」を思わせる、港町ならではの滋味深い一皿です。

魚のアラと、魚の出し汁、香味野菜やトマトペーストなどをじっくりと煮込み、最後はつぶすように濾して仕上げる。手間暇かけた、旨みと栄養が凝縮したスープです。一口目から魚介の旨みと香りがふわっと広がり、空っぽの胃を優しく刺激。一気に食欲が呼び覚まされます。
そんな丁寧な一皿をいただける『ほんだ食堂』は、王道のフランス料理とイタリア料理を一度に味わうことができる店です。この日、黒板に並んでいたメニューは全部で16種類。季節や仕入れの状況で入れ替わりはあるので、必ず同じメニューに出会えるとは限りませんが、「美味しいものを一番いい状態で、リーズナブルに提供したい」というのが、本田シェフのモットーです。

パテ・ド・カンパーニュ(750円)やサーモン・マリネ(1200円)、レバーペースト(550円)といったフランス定番のお惣菜と、イタリアの郷土料理であるトリッパのトマト煮(1000円)などが前菜に並びます。メインには牛ほほ肉の赤ワイン煮込み(1950円)、鯛のポワレ(1600円)など親しみやすくも本格的なフランス料理が並びます。
さらにタリアテッレやパッパルデッレなど自家製手打ちパスタを使った、きのこソースや牛バラ肉のラグーソースなど、バリエーションに富んだパスタ料理や、リゾットなどのイタリア料理も充実しています。

フランス料理店でパスタまで楽しめる店は意外と多くありません。反対にイタリア料理店でスープ・ド・ポワソンのように手間暇をかけたスープや、フォン・ド・ヴォーと赤ワインなどをじっくり煮込んだソースに出会える機会もなかなかありません。
その両方を高いレベルで一つの店に共存させられるのは、フランス料理とイタリア料理を中心とする「西洋料理」を長年教え、プロを目指す生徒たちに、技術とレシピを伝えてきた本田シェフだからこそ実現できるスタイルです。
その日の食べたい気分に合わせ、ジャンルの垣根を超えて自由に選べる贅沢。それがビストロでもなくトラットリアでもない『ほんだ食堂』ならではの魅力なのです。

「本物の味」を教える側から、届ける側に
数々の手間暇かけた西洋料理が次々にテンポよく提供され、ついワインがすすんでしまう『ほんだ食堂』。そのオーナーシェフの本田孝成(ほんだ たかあき)さんは、自身の母校でもある調理師学校で、28年にわたり調理師学校で教壇に立ってこられました。
高校時代は陸上部に所属し、将来は体育の先生か陸上部の顧問を目指していたそうですが、足の怪我によりその道を断念せざるを得なくなりました。進路に迷う中、料理人の姿に魅力を感じ、料理の道を選択。当時、国立市谷保にあった「エコールキュリネール国立」(現・辻調理専門学校 東京)へ進学しました。
在学中に料理を作る楽しさに目覚めた本田シェフは、就職活動で受けた母校の採用試験に合格。以来28年にわたり、西洋料理を教える教員として多くの料理人の第一歩を支えてきました。

長年、教える側として西洋料理と向き合ってきた本田シェフですが、その経験を今度は自らの店で届けたいと独立を決意します。たった一人で店を開業するにあたっては、限られた動線と設備の中でスムーズに営業できるような仕組みづくりに力を入れたそうです。
「以前の職場では仕込みを手伝う人がいて、材料や設備も充実してましたが、今は洗い物も片付けも全部一人。気づけば営業時間が迫っていて、思ったより時間がかかると実感することもあります」と、新たな気づきを重ねながら、日々試行錯誤を続けています。
「ワンオペのお店の料理の完成度は、仕込みで9割が決まると思ってます」と断言する本田シェフ。決して手間を惜しまず、丁寧な仕込みで提供する料理の根底にあるものは、プロを目指す生徒たちに「本物の味を伝えたい」と長年指導してきた頃と変わらない想いです。
教員時代には、職員用の賄い作りにすら決して手を抜かなかった本田シェフ。フランスの三つ星レストランでの研修や、現地のコンクールでの受賞を通して培われた確かな経験が、一皿一皿に込められています。

気さくな人柄で、料理の説明はわかりやすく、とても丁寧に伝えてくださるのですが、ご自身のことを多く語るタイプではない本田シェフ。
実は、フランス東部の山岳地ジュラ地方でワイン祭りの中の一環として開催された、フランス国家最優秀職人章(MOF)主催の料理コンクールで、2位入賞という輝かしい経歴の持ち主でもあります。
その大会にはパリの名門ホテルのシェフや、マルセイユで店を構える実力派シェフたちも参加していて、現地でも高いレベルを誇る大会だったそうです。競技では、現地の大ぶりの鱒とジュラのワイン「ヴァン・ジョーヌ」を使った料理を、限られた時間のなかで仕上げることが求められました。
そんな輝かしい経歴を持ちながらもそれを特別に語ることはありませんが、その経験を通じて「西洋料理において重要なのは、奇抜な発想ではなく、火入れや塩加減、ソースの組み立てといった、基本の積み重ね」だということを、本田シェフは取材の中で教えてくださいました。
私自身、基本のフランス料理やイタリア料理とはどんなものか?と聞かれても、うまく言葉にするのは難しいと感じます。しかし、ここではその答えに出会える気がしました。

「この場所をきっかけに、お客様が西洋料理に興味を持ってもらえたら嬉しいですね」と話す本田シェフ。かつて生徒たちに西洋料理の奥深さや美味しさを伝えてきたように、今度はオーナーシェフとして、都心から少し離れた日野のこの場所で、『西洋料理の入り口』として長く愛されるお店を作っていきたいと語ります。
多摩エリアの食材も積極的に開拓中という本田シェフ。多摩地域で生まれた食材からどんな一皿が生み出されるのか、これからますます楽しみです。西洋料理がもっと身近な存在になる。そんなきっかけをくれる一軒に、ふらりと足を運んでみてはいかがでしょうか。
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グルメライター 中村あきこ
グルメライター/日本とフランスの料理学校でフランス料理を学び、帰国後、都内フレンチレストランでサーヴィスに従事。マネージャーやウエディングプランナーを経験。また、料理とワインのマリアージュの素晴らしさに心が奪われた事をきっかけに、JSA認定ソムリエ、シニアソムリエを取得。お店に立つ側と食べる側、両方の視点から感じたものを、素直な言葉で綴り、そのホスピタリティを伝えている。現在は知人の店でヘルプシェフとしてキッチンに立つことも。二児の母。長男の育児中の食の悩みから、幼児食インストラクターを取得。親子で楽しく囲める食卓も日々研究中。
| 施設名 | ほんだ食堂 |
|---|---|
| 住所 | 東京都日野市多摩平1-5-12 タカラ豊田ホームズ106 |
| TEL | 080-7277-7165 |
| 営業時間 | 火・水・金・土・祝前日 17:00〜22:00(L.O. 料理 21:00/ドリンク 21:30) 日 11:30〜14:30(L.O. 13:30)17:00〜21:00(L.O. 料理 20:00/ドリンク 20:30) |
| 定休日 | 月曜・木曜 |
| 公式サイト | https://honda-syokudo.owst.jp/ |
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