国立の老舗酒店「SEKIYA」が運営するブルワリー併設のビアレストラン『麦酒堂KASUGAI』 | イマタマ

国立の老舗酒店「SEKIYA」が運営するブルワリー併設のビアレストラン『麦酒堂KASUGAI』

2024/10/06

こんにちは「グルメライター」の中村あきこです。長かった残暑も落ち着き、過ごしやすい季節になりました。食欲も湧いてくるこの時期、私は秋の味覚と一緒にいろいろなお酒を楽しんでみようと思います。

ワイン、日本酒に関しては普段からお料理とのペアリングを考えながら選ぶのですが、この秋はまだまだ勉強中の「クラフトビール」で秋を楽しんでみたいと思います。世界で最も多く飲まれているアルコール飲料は「ビール」なのだそうで、気軽で親しみやすいお酒です。

飲み会の席で「とりあえず生」「とりあえずビール」というフレーズが聞こえるように、難しいことは何一つ考えずにまずは乾杯。大手ビールメーカーが大量生産するビールのスタイルは、それぞれメーカーの特徴はあるものの、アルコール度数や色や苦味、切れ味など共通する部分が多く、実はそのほとんどが煮沸させた麦汁にラガー酵母を加えて低温長期熟成させて醸造する「ラガービール」なのです。

中でも淡い黄金色が特徴の「ピルスナー」と言われるスタイルが一般的です。つまりこのアルコールが低めですっきりキレが良く、ほのかな苦味が特徴の黄金色のスタイルが多くの方にとっての「ビール」のイメージなのです。

しかしながら世界には180種類以上のスタイルのビールがあるそうで、味や香り、アルコール度数、色などバリエーション豊かに楽しめます。特に「エール酵母」を使って小規模生産される「クラフトビール」は、芳醇で個性がはっきりしているものが多く、お料理とのペアリングを楽しんだり、好みや気分に合わせて選ぶことができます。

さて今回ご紹介するのは、国立市で創業100年を超える老舗酒店「せきや」が運営する、ビアレストラン「麦酒堂KASUGAI」さんです。併設のブルワリーで醸造される10種以上の個性豊かなクラフトビールと、ジャンルにとらわれないビールにぴったりなオリジナルのメニューをご紹介いたします。

和と洋が融合したお料理と
自分好みのクラフトビールで乾杯

JR中央線 国立駅から立川バスで約4分。駅からほんの少し離れた閑静な住宅街の中に、麦の穂がデザインされた黄色い暖簾が目印の、日本家屋の一軒家レストラン「麦酒堂 KASUGAI」と併設されたブルワリー「KUNITACHI BREWERY〜くにぶる〜」があります。敷地の中には蔵や、火の見櫓(やぐら)があり、趣ある雰囲気を醸し出しています。

国立駅南口から立川バス「立川駅南口行き」に乗り4駅「第三小学校」の停留所目の前にある「麦酒堂KASUGAI」

目の前のタップから注がれるビールを眺めながらお食事が楽しめる特別感のあるカウンター席

暖簾をくぐり、ガラス張りの戸を開け、店内へ入ります。ランチタイムも後半の時間でしたが、フロアの活気がエントランスにいても伝わってきます。

木を基調とした和モダン&カジュアルな1階の客席は、カウンターバーと、ゆったり広めのテーブル席があります。プライベート利用にぴったりな間仕切りのある半個室や、団体利用ができる2階の個室(要予約)もあり思い思いのスタイルで食事を楽しむことができそうです。

ベビーカーや車椅子が通れるよう入り口からオールフラットの1階フロア。席間も広いのが嬉しい
気持ちのいいテラス

席に案内され、さっそくメニューを広げてみるとランチ限定のメニューと、ビアレストランならではのお酒と楽しめるアラカルトが充実。「しらすとチーズのパリパリ焼き 550円(税込)」や「枝付き枝豆の岩塩焼き 600円(税込)」ちょっとしたおつまみにもひと工夫あり魅力的です。

14:30以降は、仕上げに生海苔を加える「大赤海老のアヒージョ」や、地元野菜を使ったパスタなども追加され、ますますビールが進みそうです。また、お店の看板メニューとして、国立市の姉妹都市である北秋田市の名産ブランド豚「桃豚」を使ったビール角煮や、愛媛県宇和島で天然と同じ環境で丁寧に育てられた黒マグロである「伊達マグロ」のお刺身や炙り焼きもあり、こだわりの食材を使ったこの店オリジナルのお料理をいただくことができます。

仕入れにより異なりますが、この日は「伊達マグロ」の赤身・漬け・頭肉の炙りをいただきました

今回は7種類のランチメニューの中から「伊達マグロのお刺身盛り合わせ定食 揚げ出し豆腐付き(2450円税込)をチョイス。「伊達マグロ」は初めていただきましたが、ねっとりとした食感で、きめ細やかな脂が特徴。天然物にも引けを取らない高品質で、頭肉の炙りも香ばしさととろける食感に大満足。思わず表情が綻んでしまいます。

またランチメニューの最大の魅力は、+300円で「KUNITACHI BREWERY〜くにぶる〜」の本日のTAPリストの中から好きな1杯選べることです。(+200円でソフトドリンクも選べます)

サクッとしたかみごたえと豆腐の熱々でふわふわとした食感が新しいビール衣の揚げ出し豆腐

私が選んだのは期間限定の「秋のあわい 1年熟成ver」というビール。赤褐色の色合いに黒ビールの味を想像し、苦味がありそうかもと思いきや、まずはメロンやパパイヤのようなフルーツ感が前面に出てきて驚きました。アフターにほんのりほろ苦い余韻が心地よく残ります。マグロの赤身や揚げ出し豆腐との相性もよく、食中に楽しめる一杯です。

10種類近くもの本日のTAPリストから「秋のあわい」をチョイス。テイスティングするのにちょうど良い150mlの量で提供されます

春夏秋冬でリリースされるこの期間限定シリーズは、ベルギービールをベースに考案されているそうで、この「秋のあわい」には酵母にベルギー由来のベルジャンイーストが使われています。また冬期には甘くスパイシーな香りが特徴の「クリスマスエール」をモチーフにしたビールがリリースされるとのこと。ぜひとも四季折々の味を試してみてはいかがでしょうか。

またリストから4種類選んでテイスティングができる「ビアフライト」(1800円税込)という利酒セット的なものもあるので、どれを飲もうか迷った時はこちらがおすすめです。

「古いは新しい」という醸造理念で
「ひと・まち・文化」をつなぐ
ブルワリー&ビアレストラン

レストランの隣に併設されている「KUNITACHI BREWERY -くにぶる-」

2021年にグランドオープンした「麦酒堂KASUGAI」と、その前年に創業した併設のブルワリー「KUNITACHI BREWERY -くにぶる-」は、東京 国立市で1910年(明治43年)から続く老舗の酒店「せきや」が運営しています。

国立駅前にビルを構える老舗酒店「せきや」は、1910年現在の谷保駅あたりでその歴史が始まったそうで、市の南側にある甲州街道沿いや谷保天満宮があるあたりを中心に人が集まり、まちが広がっていったそうです。その後1926年(大正15年)に中央線が開通し、まちの中心が市の北側、現在の国立駅周辺に変わっていったと同時に、現在の場所へと移転されたそう。

「文化がつくられる場所には必ずお酒があり、人の交流がある」という先代の言葉とともに、100年以上も国立の中心で「まち・ひと・文化」をつなぐ役割を担ってきた老舗酒店が今度はクラフトビールを発信源に新しい試みを始めたのだそうです。

店名の「かすがい」とは、木材と木材を繋ぎ止めるコの字型の金属の接合金具の事で、「お酒や食事のまわりに人が集まり、文化が醸成されていく、そのための媒介になろう」という想いが込められています。

オリジナルグラスで提供されるビールは、270mlのレギュラーサイズと473mlのパイントサイズが選べます(写真はレギュラーサイズ)

ひと言でクラフトビールといっても実に多くの種類があります。初心者にはハードルが高いのでは? と思いがちですが、こちらのブルワリーのビールは、クリーンな仕上がりで、食事に合わせやすいものも多く、さらにビアスタイルが詳しく説明されたTAPリストを見ながら選ぶことができ安心してオーダーすることができます。

「クラフトビールは飲むまで味の想像がつかないと思います。ワインなどに比べて味のレンジが広く、酸味ひとつをとっても驚くほどの酸味のものがあったりするんですよ」と話すのはセールスマネージャー・ディレクターの小林なおさん。小林さんから自社のクラフトビールの特徴とおすすめの商品についてお話を伺ってみました。

「KUNITACHI BREWERY -くにぶる-」は、日常にひろがる音楽のように文化として続いていくビールづくりを目指しているそうです。「〜古いは新しい〜という醸造理念があるんですが、伝統的なビアスタイルに敬意を表しつつ、ブルワリー独自のビアスタイルを創造する二面性をビールで表現しています」。

ラガービールのように麦汁を煮沸してから仕込む近代的な方法以外に、「Raw Ale(ロウエール)」と言われる麦汁を煮沸しない、北欧の伝統的な方法でも醸造することを得意とし、これにより芳醇で多様なスタイルのビールを生み出しています。

「例えば古い音楽が時代の移ろいとともに捉え直され、新たに次の世代へと受け継がれていくようなイメージ」。それが「KUNITACHI BREWERY -くにぶる-」のクラフトビールなのです。

数ある商品の中で小林さんにおすすめいただいたのは「1926(イチキューニーロク)」というビール。こちらは国立市のシンボルである旧駅舎の竣工年を名付けた商品で、ドイツのケルン地方で生まれた爽やかさが特徴のケルシュスタイル。実際飲んでみると、レモンや白葡萄のようなアロマが爽やかで心地よく、まるで白ワインを飲んでいるようでした。さっぱりとした味付けの野菜料理や、魚介類のお料理と相性が良さそう。などとペアリングのイメージを想像しながらいただきました。

秋田県発祥の寒麹を使ったザワークラウトやピリッと絡みを効かせた小松菜のナムル、いぶりがっことの相性も抜群でした
小林なおさん(左)と、和食やイタリアンなど様々なジャンルの経験を持つシェフの高柳大樹さん」(右)

現代の日本の日常の食卓は、和食、洋食といったジャンルにとらわれない和魂洋才のお料理で溢れています。そんな日常の食卓にフィットするよう試行錯誤された「KUNITACHI BREWERY -くにぶる-」のクラフトビール。

100年以上前からお酒と共にこのまちの文化を牽引してきた老舗酒店「せきや」の体験型のビアレストラン「麦酒堂KASUGAI」でクラフトビールの楽しさを知ってみてはいかがでしょうか。

国立駅前にあるSEKIYA TAP STANDでは、「KUNITACHI BREWERY -くにぶる-」のクラフトビールの量り売りもしています

グルメライター 中村あきこ 

グルメライター/日本とフランスの料理学校でフランス料理を学び、帰国後、都内フレンチレストランでサーヴィスに従事。マネージャーやウエディングプランナーを経験。また、料理とワインのマリアージュの素晴らしさに心が奪われた事をきっかけに、JSA認定ソムリエ、シニアソムリエを取得。お店に立つ側と食べる側、両方の視点から感じたものを、素直な言葉で綴り、そのホスピタリティを伝えている。現在は知人の店でヘルプシェフとしてキッチンに立つことも。二児の母。長男の育児中の食の悩みから、幼児食インストラクターを取得。親子で楽しく囲める食卓も日々研究中。

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DATA

施設名 麦酒堂KASUGAI
住所〒186-0002 東京都国立市東3-17-27
TEL042-843-0990
営業時間日 11:00 ~ 21:00
平日・土 11:00 ~ 22:00
※月・火・木・金 15:00 ~ 17:00 はクローズ
※ランチメニュー14:30L.O
※ディナーお食事は閉店時間の1時間前L.O
※ドリンクは30分前L.O
定休日毎週水曜日
公式サイトhttps://b-kasugai.com/
駐車場あり(5台) / 駐輪場あり

※最新の情報は公式サイトをご確認ください。



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