【国立市】こだわりの揚げ春巻き 「Chả Giò(チャー・ゾー)」など手間暇かけたベトナム家庭料理が味わえる『くにたち サイゴン桜』 | イマタマ

【国立市】こだわりの揚げ春巻き 「Chả Giò(チャー・ゾー)」など手間暇かけたベトナム家庭料理が味わえる『くにたち サイゴン桜』

2025/03/03

こんにちは、イマタマグルメ ライターの中村あきこです。料理ジャンルのひとつ「エスニック料理」と聞くと、ハーブや香辛料を用いた香り高くスパイシーな料理をイメージする人が多いのではないでしょうか。

本来「ethnic(エスニック)」とは、民族の・民族特有のという意味の形容詞なので、エスニック料理は「民族の郷土料理」と捉え、東南アジア・南アジア・中東・西アジア各国など、非常に多種に渡る料理をひとまとめにしたジャンルなのです。中でも東南アジアのエスニック料理の代表格でもあるタイ料理やベトナム料理は専門店も多く人気があります。

東南アジアは中国文化の影響を受けた麺料理が多いのも特徴で、日本人の好みにも合うのが人気の一つではないでしょうか。ベトナムの汁麺「フォー」や、タイの焼きそば「パッタイ」などに代表される料理に使う麺は、米づくりが盛んなこの地域柄、「米粉麺」を使うのが多いのも特徴的です。

また、その麺だけに注目しても、ベトナムのフォーやブン、タイの「センレック」や「センミー」のように、原料は同じでもそれぞれ形状や製法が違い、料理によって使い分けられることまでは、なかなか深く知る機会がありません。専門店でいただく際には、その国の言語でのメニュー名や食材、現地の食のスタイルにも興味を持ち、その国の文化を知った上で味わうと一層楽しめるのではないでしょうか。

さて今回紹介するのは、国立市にある創業13年。一度訪れると、また誰かを誘って行きたくなってしまう魅力的なベトナム料理店「くにたち・サイゴン桜」さんです。こちらのお店は、日本に来て28年のベトナム人女性シェフが、明るく温かいおもてなしと、添加物などは一切使わない、素材を活かした手作りの「ベトナム・スローフード」が味わえると食通のマダムたちの間でも評判のお店です。彼女の出身地のポピュラーな麺料理や、他では味わえないひと手間かけたシェフこだわりの揚げ春巻き「Chả Giò(チャー・ゾー)」をご紹介いたします。

フォーや生春巻きだけではない
地方色豊かなベトナム料理

ベトナム料理店「くにたちサイゴン桜」は、JR中央線国立駅より徒歩5分。桜並木の「大学通り」沿いにあります。国立駅を背にして左側の通りを少し歩くと見えてくる煉瓦色のビル「popolo(ポポロ)ショッピングセンター国立館」に入り、エレベーターで2階に上がります。

お店の入り口から中を覗くと、落ち着いた色合いの、木を基調としたカウンターキッチンがあり、その中央でシェフが一人でお店を切り盛りしている姿が見えます。店内の席はキッチンと対面になるカウンターに5席と、大学通りの風景が望める窓側に横並びで5席の全10席の小さなお店。通り沿いには目立った看板がないのですが、ランチタイムはたいてい満席の状態が続くそうで、知る人ぞ知る人気店であることが伺えます。

清潔感があり、木の温もりを感じるアットホームな店内。キッチンと対面する広めのカウンターテーブルの座り心地の良い椅子で、ゆったりくつろぎながらお食事がいただけます

「いらっしゃいませ、こちらの席へどうぞ」と、ほぼ満席の店内の最後の1席に案内され、ほっと一息つきながらメニューを眺めていると、隣の席に料理を運び終えたシェフが「これ美味しいですよ」とフレンドリーに声をかけてくださり、おすすめのお料理を説明をしてくださいました。

こちらがお店のオーナーシェフのĐăo(ダオ)さんです。彼女の名前はベトナム語で「桜」を意味する言葉なので、お客様からは桜さんとも呼ばれているそうです。調理しながらも店内のお客様、一人一人に心地よいタイミングで声をかけ、気を配るシェフの姿が印象的です。常連のお客様も多いようで「今日は何にしますか?」「この前はこれを食べていましたね」などと、いつもの注文内容や麺の硬さ、味付けの好みなど声をかけ、またお客様も安心してシェフにお任せしているようでした。

人気メニューは、「桜 プチ・ランチコース」1800円(税込)で、小さな前菜3種と、お食事1品が選べます。選べるお食事はベトナムの名物料理が全部で7種類用意されています。ベトナムで一番有名な麺「フォー」を使った「フォー・ボー」(牛肉のスープヌードル)や、ベトナム南部で定番の朝ごはん「フーティウ」(野菜、肉、海老などのスープヌードル)、またソフトバゲットにパテや野菜、なますを挟んだサンドイッチの「バイン・ミー」、ココナッツミルクとべトナムのカレー粉を使った「ベトナムカレー」など、どれも魅力的で迷ってしまいます。単品(1200円税込)での注文もできますが、ここはぜひ前菜がいただけるお得なランチコースでゆっくりと楽しむのがおすすめです。

この日は、シェフの生まれ故郷のサイゴン(現在のホーチミン)の名物料理「フーティウ」というスープヌードルを注文しました。

野菜がたっぷりいただけるヘルシーな一皿は、和え物、生春巻き、揚げ春巻きの盛り合わせ。ヌックマム(魚醤)と酢を合わせた爽やかなヌクチャムや自家製のピリ辛のサテソースをつけていただきます

初めに前菜の「プチ・ベトナム料理」をいただきます。砕いたピーナッツ・キャベツ・人参・大葉の和え物は、「ヌックマム(魚醤)」で味付けされた甘酸っぱい、オイルの入らないソースでが絡められ、ヘルシーで後引く味付けに箸が止まらなくなります。

生春巻き「Gỏi Cuốn(ゴイ・クォン)」はオーダーが入ってから巻くので、モチモチとした食感。またサニーレタスに包んでいただく、カリッとした食感が香ばしい揚げ春巻き「Chả Giò(チャー・ゾー)」など、どれもシャキッと新鮮な野菜をと共にいただける満足感のある一皿です。

特に揚げたてを提供するシェフこだわりの揚げ春巻き「チャー・ゾー」は、豚もものひき肉や生海老、じゃが芋、干し海老、キクラゲ、干し椎茸など実に多くの具材が使われているそうです。春巻きの発祥は中国ですが、小麦粉の皮ではなく、米粉でできたライスペーパーを使います。

また中国の春巻きに具材として使われる春雨の代わりに断面の丸い細い米粉の麺「ブン」が入っています。ベトナムで「ブン」は「フォー」と同じくらいポピュラーなのだそうで、生春巻きの具にも入りますし、茹でて冷やした「ブン」に揚げ春巻き「チャー・ゾー」を載せて、「ヌックマム」の甘酸っぱいソースで絡めて食べる混ぜ麺「Bún Chả Giò( ブン・チャー・ゾー)」など人気の定番料理にも使われます。

「美味しく仕上げるためにたくさん研究をしました」と話すシェフ。具材の多さだけでなく、ライスペーパーの大きさの調整や、水分で柔らかく戻す際にもひと工夫があるそうで、試作をくり返し、今は納得のいく食感に仕上がっているとのこと。以前こちらのお店で料理教室を開催した際に、この「Chả Giò(チャー・ゾー)」を教えたそうですが、その手の込んだこだわりのレシピに生徒さんが、「やっぱりここ(お店)のを食べた方がいいわ」と、簡単には真似ができない唯一無二の逸品を楽しみに訪れるお客様も多いそうです。

生春巻きにはヌクチャム(ヌックマムと酢の甘酸っぱいソース)、揚げ春巻きには辛味のサテソースをつけていただきます。ソース類も全てシェフの手作りで既製品は使わないそうです
これがサイゴンの朝ごはん「フーティウ」優しい味付けのスープにたっぷりのお野菜と海老や豚肉などが入る栄養満点の一皿です

「私の故郷では朝ごはんにこの料理をよく食べますよ」とダオシェフが話します「Hủ Tiếu(フーティウ)」は、豚足などををじっくり煮込んだ、コクと旨みがありながらも、さっぱりといただけるスープヌードル。たっぷりの野菜と肉や海老がトッピングされたこの料理は、食べやすく手軽に栄養がとれるので、ベトナム人でなくとも朝ごはんにいただきたい一品です。

「フーティウ」とは「フォー」より細めの平たい米麺のことで、ベトナム北部の料理にはフォーが多く登場しますが、南部ではフォーよりもフーティウが一般的なのだそう。つるっとした食感で、コシがあるのが特徴です。

豚足と野菜をベースにとった出汁は、さっぱりとしながらも旨みたっぷりで滋味深く優しい味わいです。パクチーやニラなどの薬味がエキゾチックに香ります。お好みでサテソースを加えて辛くしても良いそうで、味変しながら楽しめます。

コースに+100円で追加できる日替わりデザート。クリーミーなココナッツミルクの「チェー」を注文

「デザートもぜひ食べてみてください」とおすすめされた日替わりデザートの「チェー(Chè)」は、甘いスープという意味で、ココナッツミルクを使った冷たいお汁粉風のスイーツです。

中の具材は毎朝シェフが食べたいものを入れるのでこれといった決まりはないそうですが、この日は緑豆やタピオカ、蓮の実、細く切った昆布などが入っていました。じんわりしみる甘さとさまざまな具の食感の違いが面白いスイーツです。

日本でも愉しめる
ベトナムスローライフとスローフード

心と体がほっとするようなスローフード&スローライフな、ベトナムの文化や雰囲気を味わうことができる「くにたちサイゴン桜」は、シェフの人柄の良さと、安心安全な食へのこだわりでお客様を魅了します。気配りのあるフレンドリーな接客と、異国の料理ながらもなぜかほっとしてしまう優しい味付けは、日本人の好みとマッチしていていると感じました。

シェフのご実家はベトナム南部の大都市サイゴン(現在のホーチミン)。食文化に恵まれた地域で育ったシェフは、幼い頃から美味しい料理が身近にあり、食べることが好きだったそうです。結婚後はご主人の仕事の関係で住み慣れたベトナムを離れ、日本に住むことになり、言葉や文化の違いに大変苦労をされたそうですが、4人のお子さんを育てながら、日本で料理の勉強を始めました。日本の家庭料理とベトナム郷土料理について、多くの本を読み独学で料理の勉強をし、またベトナム食文化に関わるフランスにも行き勉強をしたと話します。

手作り鶏レバーのパテと鶏胸肉、なますやパクチーなど具沢山の「バイン・ミー」はフランス文化の影響を受けたベトナムの軽い食事

その後はオーナー夫妻が気に入った土地でもあった国立で、縁あり今の店舗に巡り会えました。店名は、日本と国立市の象徴でもある「桜」とシェフのベトナム語の名前の意味から「くにたちサイゴン桜」と名付けられたそうです。オープンは、2012年。

幼い頃から手間暇かけた美味しいものを食べていた経験や、試作を繰り返し研究を重ねる勉強熱心さから生み出されるその味と、シェフの明るく真面目な人柄でファンも多く、毎週来られる常連客が、遠くに引っ越しても月に一度は必ず訪れ「たまにしか食べられないから」と、一度に二人前を食べていかれるなんていうエピソードも。

お腹も満たされ、食後に香り豊かなベトナムコーヒーをいただきながら、大学通りの風景を眺めていると、忙しい毎日を忘れられるゆったりとした時間が流れます。

ランチタイムは予約はできませんが、遅めの時間だと比較的空いているので、ぜひふらっと訪れてみてはいかがでしょうか。第一日曜日のみ、完全予約制の「おまかせコース」で夜営業(17:00〜20:00)もされています。詳しくはホームページをチェックしてみてください。

コンデンスミルクを敷いたカップに載せたアルミ製のドリッパーで濃いめのコーヒーを淹れるベトナムコーヒー。ベトナムのコーヒー産地で有名なBAOLOCの豆を現地から仕入れています

グルメライター 中村あきこ 

グルメライター/日本とフランスの料理学校でフランス料理を学び、帰国後、都内フレンチレストランでサーヴィスに従事。マネージャーやウエディングプランナーを経験。また、料理とワインのマリアージュの素晴らしさに心が奪われた事をきっかけに、JSA認定ソムリエ、シニアソムリエを取得。お店に立つ側と食べる側、両方の視点から感じたものを、素直な言葉で綴り、そのホスピタリティを伝えている。現在は知人の店でヘルプシェフとしてキッチンに立つことも。二児の母。長男の育児中の食の悩みから、幼児食インストラクターを取得。親子で楽しく囲める食卓も日々研究中。

#イマタマグルメへ >>

イマタマTOPへ >>

『旅する多摩』へ >>

DATA

施設名 くにたちサイゴン桜
住所東京都国立市東1丁目16−17 ポポロショッピングセンター国立館2階
TEL050-3573-5027
営業時間11:00〜15:00(予約不可)
定休日水・日曜日 
第一日曜日のみ夜営業あり
(17:00〜20:00 要予約) 
公式サイトhttps://www.saigon-sakura.com/

※最新の情報は公式サイトをご確認ください。



こちらもおすすめです


カテゴリー