こんにちは「グルメライター」の中村あきこです。
卒業シーズン。新しい生活がもうすぐ始まり、これから働き始める方達の中には、食に関わるお仕事に就く方もいらっしゃるのではないでしょうか。
コックコートに身を包み、様々な食材から魅力的な料理や菓子を作り出す、料理人やパティシエ。お客様をおもてなしするサーヴィスマン。カフェやバーで働くバリスタやバーテンダーなど。また飲食店だけではなく、栄養士や食品メーカー、フードコンサルタントやフードアドバイザー。さらには醸造家や畜産業、農業、漁業などといった生産に関わる仕事など多岐にわたります。
その中でも生産者やメーカーから確かな食材や酒類などを買い付け、飲食店に販売する卸業と呼ばれる仕事もあります。現在はインターネットの普及で、生産者と直接取引をする飲食店も少なくはありませんが、食材すべてをそれで賄うには当然時間や手間がかかります。
料理人が本来の業務に時間を充てるためには、食材の知識や情報が豊富で、店側のニーズを考えた商品の提案ができる卸業者との関わりも非常に重要になります。表舞台にはなかなか見えてこない仕事ですが、飲食店で提供される料理の裏側には、料理人以外にも多くの人が関わっていると知ると、その一皿がさらに魅力的に感じるのではないでしょうか。
さて今回取材させていただいたのは、東久留米卸売市場を拠点に、東京都内と埼玉県内の飲食店に業務用の輸入食材を提供する食品卸業者「KAWAKAMI」が運営する「Bistoria(ビストリア)小平店」さん。イタリアン&フレンチの郷土料理をプロが目利きしたカジュアルワインや珍しい食材と共にをご紹介いたします。
昼呑みもウェルカムなビストロ×トラットリア
店名の「Bistoria(ビストリア)」とは、フランスの大衆食堂「Bistoro(ビストロ)」と、イタリアの大衆食堂「Trattoria(トラットリア)」を組み合わせたオリジナルの言葉だそう。ライトグリーンの窓枠がポップなガラス張りの外観や、無造作に書かれたメニュー、テラス席に心惹かれます。
奥行きのある店内は、ゆったり広めのテーブル席が並んでいて約20席ほど。カジュアルながらも少し落ち着いた大人の雰囲気です。壁側の棚には流行りのナチュールワイン(自然派)やイタリアの人気の作り手のワインなどがディスプレイされています。
店内の手書き黒板には、イタリアマルケ州の郷土料理の「ポタッキオ(白ワイン煮込み)」や、「サルシッチャ(イタリアンソーセージ)」、ナポリ名物の「アランチーニ(ライスコロッケ)」。またフランスの「パテ ド カンパーニュ」などといった、イタリアとフランスの美味しいところどりの前菜がラインナップされ、メインディッシュの肉料理の欄には、穴兎や鹿肉といった珍しい食材もあります。
また、ワインや生ビールなどアルコール類を含む、乾杯ドリンクが1杯付いたセットメニューも人気だそうです。乾杯ドリンク+サラダとアンティパストの盛り合わせ+選べるパスタorピッツアで 2,600円(税込)と、とってもリーズナブル。さらには+600円でメインデッシュを追加できます。
こちらのお店はランチとディナーで料理の内容を変えず、どちらの時間帯でも同じメニューで提供されています。ランチタイムでも充実した食事を楽しみたい方や、昼呑み派にも嬉しいサービスです。
また人数や料理内容に関係なく追加できるハウスワインの飲み放題コース「ワインカーニバル!」(2,600円税込)は、利用時間が最大4時間というなんとも太っ腹!
その他ワインリストには通好みなイタリア土着品種の珍しいものや、流行りのナチュールなど、イタリアに特化したバラエティ豊かなボトルワインが4,000円〜とリーズナブルに楽しめます。
フランスとイタリアどちらの食材も活かせるようにと名付けられた「Bistoria(ビストリア)」
ここは食材選びのプロが目利きした、ワインと食材をその場でいただける場所なのです。
レストランを裏側から30年以上支えている
プロが提案する理想のスタイル
「このワイン美味しいでしょ! 普段は基本これしか飲まない、これが僕のワイン選びの基準になっているんですよ」と、味わいのバランス、値段ともに「自社一推し」というハウスワインを紹介しながら、気さくに話してくださったのは、業務用輸入食材の卸業者「KAWAKAMI」の代表取締役社長 通称「隊長」の川上和也(かわかみかずや)さんです。お茶目で遊び心に溢れた人柄で、社員たちからもそう呼ばれているそうで、名刺の肩書きは「代表取締役隊長」。その食材やワインの知識の豊富さから、数多くの料理人やソムリエからの信頼も厚いリーダー的存在なのです。
昭和60年創業の「KAWAKAMI」は元は先代が営む小さな問屋だったそうですが、食べることへの情熱あふれる和也さんが社長に就いてからは、会社の方針を変更し、イタリアンやフレンチを中心とした飲食店向けの輸入食材の卸業者というスタイルに。現在、関東食糧グループと合併し、ヨーロッパの輸入食材やワイン、希少で珍しい肉、魚介類、野菜などを、東京都内と埼玉県の多くの飲食店に提供しています。
またその美味しさを伝える直営店としてこちらの「ビストリア小平店」と、埼玉県所沢市にイタリア郷土料理とジビエ料理を専門とした「ビストリア所沢店」を展開。
また2023年に、東久留米の卸売市場内にイタリアワインに特化したワインショップと食材店の「カワカミメルカート」をオープンしたそうです。
このように飲食店だけでなく、一般の消費者の方にもその商品の魅力を知ってもらい、美味しいものを広めているそうです。
「これまで一万皿以上の料理を見てきましたよ」と話す和也さんは、食べることと呑むことへの情熱溢れる確かな舌の持ち主で、自身は料理人ではないもののその腕はプロ顔負け。
ワインの知識も豊富で、売り手と飲み手の両方に嬉しい、魅力的な商品を提案をされています。
「若い頃は、営業先のレストランの厨房で自ら洗い物を手伝いながら、シェフたちがどんな食材を使ってるのか、どんなふうに調理をするのかをこっそり学ばせてもらう。なんて事もしていましたよ。最初は邪魔者扱いされていたのに、気づいたら『エプロンつけろよ』なんて言ってもらったりね」と一流シェフとのエピソードを笑い話を交えて和也さんは話します。
そうした地道な経験を重ね、シェフたちの理想や要求をいち早く察知し、どんな商品を仕入れれば良いかを知り、お店のニーズに合わせた商品を提案し信頼関係を築いて行ったそうです。
自ら営業に出ることも多いそうで、常に時代の流れをリサーチした商品を提案。また「何よりも食べることと呑むことが好き」と常に多くの飲食店を食べ歩き、どんな飲食店がお客様を惹きつけるのかということを知り、そのノウハウを直営のレストラン運営にも生かしているのだそう。
こちら「ビストリア小平店」では和也さんの息子さんがシェフとしてキッチンを担当しています。プロの目利きである和也さんの伝える素材の活かし方や調理法、ワインとの合わせ方などに見事に応え、親子のコンビネーションで生み出された料理がいただけます。
この日はフランスシャラン産の希少な「エトフェ鴨」のもも肉が入ったということで、調理してくださいました。「エトフェ」とは屠鳥の際に鴨を窒息させ、肉全体に血を行き渡らせて肉質を柔らかくするという方法です。
通常鴨のもも肉は筋肉質で身が硬いため、塩漬けにして「コンフィ(低温の油でゆっくりと火入れする調理法)」にしてしまうのが一般的なのですが、エトフェの鴨もも肉は、その屠鳥の方法から、そのまま焼いても柔らかく、風味が豊かなのが特徴なのだそうです。
和也さんがシェフに調理法をアドバイスしながら仕上がった一皿は、噛むたびにジューシーで野生的な鴨肉の旨みが溢れていました。
「今日はこんな素材が入ってますよ」「こんな珍しいワインが入りましたよ」。そんなやりとりから始まる、グルメには堪らない空間。ワインとイタリア&フランスの郷土料理がいただける「Bistoria小平店」で今宵グラスを傾け、Salute(乾杯)!
Instagram:https://www.instagram.com/bischef53/
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グルメライター 中村あきこ
グルメライター/日本とフランスの料理学校でフランス料理を学び、帰国後、都内フレンチレストランでサーヴィスに従事。マネージャーやウエディングプランナーを経験。また、料理とワインのマリアージュの素晴らしさに心が奪われた事をきっかけに、JSA認定ソムリエ、シニアソムリエを取得。お店に立つ側と食べる側、両方の視点から感じたものを、素直な言葉で綴り、そのホスピタリティを伝えている。現在は知人の店でヘルプシェフとしてキッチンに立つことも。二児の母。長男の育児中の食の悩みから、幼児食インストラクターを取得。親子で楽しく囲める食卓も日々研究中。
施設名 | Bistoria(ビストリア)小平 |
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住所 | 小平市美園町1-8 コーシャハイム美園町1F |
TEL | 042-313-6111 |
営業時間 | 水木 11:00-15:00 金 11:00-14:30/17:00-21:00 土 11:00-21:00 日 11:00-20:00 |
定休日 | 月・火 |
公式サイト | http://bistoria.com/service/bistoria/ |
※最新の情報は公式サイトをご確認ください。