【小平市】あの身近な植物が薬草だった!?知る楽しさが詰まった「東京都薬用植物園」 | イマタマ

【小平市】あの身近な植物が薬草だった!?知る楽しさが詰まった「東京都薬用植物園」

2022/12/20

驚きでいっぱいの園内散策のすすめ!

東京都小平市の北端、西武拝島線東大和市駅から徒歩2分のところに「東京都薬用植物園」はあります。交通量の多い道路に面した正門では、昭和21年の開園時に植林された樹齢約85年の風情あるアカマツが迎えてくれ、一旦園内に入ると、木漏れ日が光る林や温室、薬用植物等の栽培エリアが広がる、ちょっとした異空間が広がります。

東京都薬用植物園建物
入口を入ると温室と大きな木々が迎えてくれます。
アカマツ
街の中にある「東京都薬用植物園」アカマツがお出迎え。

でも、普段、薬用植物とか薬草とか漢方とかに興味がないと思っていても、もし、この植物園に来て、園内を歩き始めるとすぐに、庭先や道端にも咲くあの花や、いつもの公園にある木、毎日食べている野菜やハーブなどを見つけて、これが薬用植物(薬草)?と、思わず植物の説明書きを二度見してしまうくらいの楽しい驚きにあふれた時間が過ごせるのではないでしょうか。

今回、薬用植物園主任研究員の中村 耕(こう)さんに、園内を案内して頂きながらお話をうかがいました。

まず、「東京都薬用植物園」は、その名前のとおり、薬用となる植物を扱っています。薬用とは何かというと、薬として用いられるという文字通りの意味で、私たちがお世話になっている薬や漢方薬などの原料となる植物を育成しています。「東京都薬用植物園」の主な目的は、薬用植物等の栽培だけでなく、公的機関として、研究、調査、鑑別、検査なども行っています。国内・海外の公的機関と連携して種の交換や、栽培技術の共有、薬事や医療などに携わる方たちへの教育研修なども行い、広く私たちの健康や安全のために生薬等の品質や安全性を確保するために日々活動されています。

カンゾウ(甘草)の筒栽培の様子
カンゾウ(甘草)の筒栽培の様子。より効率よく育成する技術を伝えるのも大事な役割。

さて、園内を案内して頂いている間にも、薬用植物に関する面白いお話が沢山うかがえました。たとえば、柿のヘタは、柿蒂(してい)と呼ばれる生薬としてしゃっくり止めに使われたり、チョコレートになるカカオ豆の成分は、37℃で溶ける性質を利用して坐薬のコーティング剤として使われているそうです。美味しく食べるだけじゃなく有用植物でもあります。

柿の木
柿の蔕(へた)は柿蔕(シテイ)という生薬になる。
温室とカカオ
カカオは、木の幹に直接実がなる不思議な植物。温室にて。

次に、栽培エリアを歩いてみました。漢方薬原料植物区、製薬原料植物区、民間薬原料植物区、染料香料植物区、有毒植物区と、その他にも、ふれあいガーデン、栽培試験区、外国植物などの区画もあり、園内はとても分かりやすく区分されています。各植物の説明文も見やすい位置に置かれているので、いつも目にする植物を見つけたら、その花や茎、葉、実、根がどんな薬用効果を持っているのかを学びながら散策できます。

園内マップ
コンパクトにまとまった園内がひと目で分かる園内マップ。
植物によって区分されている園内
用途による薬用植物が分かりやすく区分されている園内。

中村さんによると、薬用植物とは、製薬や漢方薬に使われる効果が特定されているものと、民間薬として昔から伝わって利用されているものとに主に分けられるそうです。薬として分かりやすいのは、抗がん剤や麻酔などです。そして、漢方といえば中国の知恵というイメージですが、実は、6世紀に中国から入って来た知識を日本で活用している間に、日本独特の治療法が生まれ、江戸時代に確立した日本の伝統医学のことなんです、と中村さん。薬用植物として西洋薬や漢方薬などに通常利用される753種の植物と、その他を含め全部で1,600種もの植物(一部は栽培植物)の野生種がここで育成されているそうです。都内の他の植物園に比べても決して広くはない園ですが、ここで見られる薬用植物の多様さは圧巻です。

四物湯という漢方薬に含まれている4つの生薬
血行をよくする「四物湯」という漢方薬に含まれる4つの生薬が分かるようになっている。
ニチニチソウ
庭先で見かけるニチニチソウは有毒でかつ抗がん剤の成分となる。
サフランライスの色付けに使われる赤い雌蕊
サフランライスの色付けに使われる赤い雌蕊の柱頭部分は鎮静効果がある

一般にも開かれた薬用植物園として、誰でも参加できる様々なイベントや講座も開催しており、薬用植物・生薬等に関する知識を広く伝える役割もしています。たとえば、夏休みに親子で参加できる花の栞作りや葉っぱのお絵描きや、江戸東京野菜やハーブ、漢方などを学ぶ単発講座や、生薬を深く学ぶ連続講座など、年間を通して沢山のプログラムが用意されています。毎年、3月下旬に1年間のプログラムが公表されるので、気になる方はホームページをチェックしてみてください。

薬用植物園でありながら、ロックガーデンや円形のガーデン、水が流れるエリア、散策が楽しい林、温室、園芸用の植物の苗の販売所(火曜日定休)など、変化に富んだ見せ方がされていて、おとなはもちろん、お子さまと一緒でも十分楽しめる植物園です。

ロックガーデン
ロックガーデン。薬用植物の庭のよう。
水生の薬用植物
水生の薬用植物も。
園芸用の苗木の販売
園芸用の苗木の購入もできる。

身近によく見る植物や食べている野菜や果物にこんな成分や効果があるんだと知る楽しみがあり、「薬用」という用途で、人と植物はつながっていることを感じられる「東京都薬用植物園」。興味がある方には、園内ガイドボランティア(花咲案内人)の方たちによるガイドを予約制でお願いすることもできますので、ぜひ一度、お出かけになってみてください。

DATA

施設名 東京都薬用植物園
住所東京都小平市中島町21-1
TEL042-341-0344
営業時間4月〜9月 午前9時から午後4時30分まで
10月〜3月 午前9時から午後4時まで
定休日月曜日(月曜日が祝日の場合は、その翌日が休園日となります)
ただし、4月の第3、第4月曜日と5月の月曜日は臨時開園します。
年末年始(12月29日~1月3日)
※薬事資料館は、現在は休館中です。
料金無料
公式サイトhttps://www.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/lb_iyaku/plant/
アクセス1.西武拝島線東大和市駅下車徒歩2分
2.JR立川駅北口から西武バス南街方面行で(6-8番乗場)都立薬用植物園前下車
駐車場あり

※最新の情報は公式サイトをご確認ください。



こちらもおすすめです


カテゴリー