こんにちは、イマタマグルメ ライターの中村あきこです。初夏の心地よい良い気候の中、休日の午後は家族や友人とのんびりとお茶とおしゃべりを楽しみたくなりますね。そんな日のグルメのひとつに、ちょっぴり贅沢な気分が味わえる「アフターヌーンティー」はいかがでしょうか。
「アフターヌーンティー」というと「3段式のスタンド」にスコーンやサンドイッチ、スイーツなどが盛られたトラディショナルなスタイルを想像します。格式高いこのスタイルでお茶を楽しむ習慣は、19世紀のイギリスに始まったといわれ上流階級の女性たちの華やかな社交の場でもあったそうです。
数年前から「ヌン活」や「ヌン茶」といった言葉が使われるようになってきたように、ホテルやおしゃれなカフェでは、この「3段式のスタンド」を使った「アフターヌーンティー」を提供するホテルやおしゃれなカフェが増え人気を集めています。
しかしながらこの「3段式のスタンド」を用いた提供スタイルについて、イギリス人を家族に持つ友人に尋ねてみたところ、本家イギリスでは、「お茶とスイーツを楽しむ習慣は日常的にあるものの、『3段式のスタンド』は、日本と同じようにホテルやカフェなどではみられるが、現地の友人宅などではお目にかかることはない」とのこと。かつては日常的なおもてなしとして大切にされていた「伝統のスタイル」がだんだん特別なものへと変わりゆく姿は、「日本の茶道の文化」とも似ているような気がしますね。
さて、ここ多摩地域に英国気分で「アフターヌーンティー」が楽しめる「ティーガーデン」が、西多摩エリアの、青梅駅から奥多摩方面へ2つ目の「日向和田(ひなたわだ)駅」にあるのをご存知でしょうか。幼少時代を日本で過ごしたアメリカ出身のタウン・A・スティーブさんと、カナダ出身でスコットランドにルーツを持つ奥様のローズさんご夫妻が営む「Rose Town Tea Garden(ローズタウンティーガーデン)」です。
オーナーご夫婦が感銘を受けたスコットランドのホテル直伝のスコーンや、地元青梅産の野菜やフルーツを使ったサンドイッチやスイーツなどを手作りで提供する「英国風アフターヌーンティーセット」が、眼下に多摩川を見下ろす景観を眺めながらゆったりとした自然の中で楽しめます。
バラエティー豊かな紅茶選びから始まる
優雅なティータイム
JR青梅線「日向和田駅」を出て、山側に向かってなだらかな坂道を上ること約5分。目の前にカナダと日本の国旗が見えてきます。門をくぐり敷地の中に入ると、ネイビーの屋根とペールブルーの外壁のコントラストが美しいチャペルのような邸宅が現れます。
自然豊かな風景の中に突然現れ、ひときわ目立つ立派な建物をはじめてみた瞬間は少し驚きましたが、伺ってみたところ、ここはもともと結婚式が行える披露宴会場として使われていたそうで、このチャペルのような外観に納得です。
ここが、オーナーのご主人タウン・A・スティーブさんと、その奥様のローズさんが営む「Rose Town Tea Garden(ローズタウンティーガーデン)」です。この建物を気に入ったスティーブさんが2008年に購入し、2012年から英国風アフターヌーンティーが愉しめるティーガーデンとして営業されています。
「ようこそいらっしゃいませ」と出迎えてくださったオーナーのタウンさんは、宣教師だったお父さんについて、2歳の頃に日本にやってきたそうです。幼少期を日本で過ごした経験があったことや、米軍所属の日本語専門将校として長く日本で働いていたこともあり、流暢な日本語でゲストをお迎えします。
店内へ一歩足を踏み入れると、白を基調としたゴージャスな作りでありながらも、清楚で可愛らしい雰囲気のインテリアに心地よさを感じます。エントランスから向かって奥には、明るく光が差し込む窓とテラス席が見えます。
普通ですとここから席に案内されるかと思いますが、こちらのお店では席に着く前に、その日にいただくお茶をチョイスします。「それではまずお好きな紅茶を選んでいただきましょう」と、タウンさんに促され、小瓶に入った紅茶のサンプルがずらりと並んだテーブルへ案内されます。
紅茶好きであるローズさんお気に入りのティーハウスで仕入れる厳選された茶葉は、「ダージリン」や「アッサム」、「アールグレイ」などの定番の紅茶以外に、ご夫妻の出身地であるカナダの成り立ちに着想した「カナディアンヘリテージ」という「オリジナルブレンドティー」や、エリザベス女王の開催するガーデンパーティーのために「ブレンドセレクト」された「バッキンガムパレス」など、ここでしか味わえないものもあり、いろいろ試してみたくなります。
またベースとなる茶葉にドライフルーツやスパイスなどを加えた「フレーバードティー」も数多く揃い、ペパーミント、ピーチといったイメージの湧きやすいものから、ネーミングだけではちょっとイメージが湧かないものまであり、瓶の蓋を開けてもらい香りを嗅いだり、ネーミングにまつわるストーリーを聞きながら、これと思うお気に入りを見つけます。
私は爽やかな甘さ感じる香りがとても気に入ったのと、こちらのお店の名ともリンクしている「ローズガーデン」というバラの花びらが含まれたフレーバードティーをチョイスしました。自分のお気に入りの一種類を見つけるのは、とても悩みますが楽しくて特別感が感じられるひととき。飲みたい紅茶が決まったらローズさんがポットを温めて準備を始めるので、ここでいよいよ席に案内されます。
国産小麦を使ったスコットランドスタイルのサクサクスコーンに舌鼓。贅沢に楽しむお茶の時間
この日は気候も良かったので、テラス席に案内していただきました。目の前の広がる景色に「わぁ!」と思わず、感動の声をあげてしまいました。山に囲まれた谷間に多摩川が流れ、その対岸には遠くの山々が望めます。新緑の季節も美しい景色ですが、タウンさんのお気に入りの景色は赤や黄に色づく秋の紅葉だそう。季節を変えて何度でも訪れたくなる気分になりました。東京とは思えない、大自然の中のテラス席という最高のロケーションでメニューを選びます。
3段式の「アフターヌーンティーセット」は、「プリンセスヘザーセット」(スープ・サラダ・アフターヌーンティー・ポットティー)3,000円(税込)、「レディーグレースセット」(スープまたはサラダ・アフターヌーンティー・ポットティー)2,500円(税込)、「ローズガーデンセット」(アフターヌーンティー・ポットティー)2,000円(税込)の3種類から選べます。
他にも、キッシュとミニサラダ、サンドイッチ、スコーン、クッキーがワンプレートでいただける「メイドエバレン」セット1,700円(税込)や「ウィーティーセット」という10歳までのキッズセットも用意されているので、お子様連れの訪問も可能です。私は、スープとサラダ付きの「プリンセスヘザーセット」」をオーダーしました。
ローズさんがやってきて、先ほど選んだフレーバーティー「ローズガーデン」をカップに注いでくださいます。乾燥した茶葉の時とはまた違い、ふわっと広がるバラの甘い香りが華やかで、爽やかなさっぱりとした風味が印象的。どんなお食事にも相性が良さそうです。お茶のリラックス効果と大自然の澄んだ空気にホッと癒されるひとときを味わいます。
紅茶に続いて最初に運ばれてきたのは、深皿にたっぷりと注がれた、ローズさん特製の「ビスク風スープ」。「ビスク」はとろみのある甲殻類のポタージュですが「ビスク風」ということで、甲殻類は使われていませんが「ビスク」を作る時に使うトマトとにんじん、玉ねぎ、セロリといった香味野菜をじっくりと煮込んでとろみのあるポタージュに仕上げられています。
ハーブや生クリームで風味付けされていて奥深い味わいです。スプーンにすくって口へ運ぶと、凝縮感のあるトマトと香味野菜の甘味と旨みが口いっぱいに広がり、新鮮な美味しい野菜をたっぷりと使用していることがわかります。
これはローズさんのお母様から受け継いだメニューなのだそうで、家族の栄養や一皿の満足感を考えて作られたまさに「おふくろの味」です。スープの後には新鮮な生野菜のサラダが提供され、ランチとしても十分楽しめるコースのような形でアフタヌーンティーセットへと続きます。
ここでタウンさんが「タワー」という呼び名で紹介してくださる、「3段式のアフターヌーンティー」が登場します。スタンドに高く重ねられたそれは、私のイメージ通りのトラディショナルなスタイルでした。
「温かいスコーンから先にどうぞ」とローズさん。ほかほかのスコーンからいい香りが漂います。実は事前の下調べで、塩気のあるサンドイッチから順に食べるという「アフタヌーンティーのマナー」を聞いていたのですが、温かいものからどうぞと、「スコーン」を最初に案内してくださるローズさんに作り手の愛情を感じました。「温かいものは温かいうちに供し、温かいうちに食す」これは作り手と食べ手の暗黙のルールですよね。
タウンさんが、「スコーンを半分にしたら、添えてあるクリームとジャムを両方一緒に載せてみてください」と、おすすめの食べ方を教えてくださいました。添えてあるクリームとはこの店オリジナルの「スコーンクリーム」で、数種類のクリームをブレンドして作っています。
一般的にスコーンに添えられる「クロテッドクリーム」のように火入れはせず、ふわっと軽く食べやすいように仕上げることを意識されているそうです。またジャムもローズさんの手作りで、毎年冬に収穫された地元の柚子を使います。
温かいスコーンの上でふんわりとしたクリームが、じんわりと溶け始め、甘い香りが漂います。一口頬張ると濃厚なミルキーさと、ほろ苦く優しい甘さの柚子ジャムが相性良く、さらには中でとろけるチョコチップと合わさることで三位一体となり、思わず顔がほころびます。
このスコーンは、タウンさんご夫妻が、スコットランドのホテルに滞在した際に食べたスコーンの、あまりの美味しさに感動し、厨房のシェフにレシピを聞きに行ったのだそう。小麦の風味を生かしたサクサクと軽く食べやすいスコーンは、あっという間にいただけてしまうので、もう少し食べたいなと思ったら一個単位で追加することもできます。
サンドイッチに続いていただいた、この日の「ペストリー」は、オートミールのクッキー、ヨーグルトと抹茶のプリン、レモンブレッドが一皿に盛られていました。「レモンブレッド」とはパンを焼く時に使われる「ローフ型」で焼くので「ブレッド」と名付けられていますが、パンではなくパウンドケーキのようなものです。一口食べると鼻腔に広がるレモンの香りが印象的で、続けてその味わいも口いっぱいに感じられます。
季節によってケーキやプリンはバリエーション豊富に用意されていて、人参やバナナのケーキなども登場するそうです。クッキーは2週間ごとに変わるので、行くたびに新しい味と出会えます。
ちなみに「ペストリー」とは、パイやタルトなどの小麦粉、バター、卵などをベースに焼き上げたお菓子や料理の総称ですが、アフターヌーンティーにおけるそれは、スイーツ系を盛り合わせた皿をそう呼びます。また、サンドイッチなどの塩気のあるものは「セイボリー」と称され、セイボリー、スコーン、ペストリーの3段式がトラディショナルな「アフターヌーンティーセット」なのです。
これらすべてのお料理は、地元の新鮮な野菜や、国産の小麦を使うなど素材にも気を使いながら、毎朝ローズさんがひとつひとつ丁寧に手作りしています。まるで家族に作る食事のように、愛情を込めて作られるこのお店の「アフターヌーンティーセット」が人気が高く、リピーターが多いのに納得できました。
「ローズ タウン ティーガーデン」は英語対応も当然のことながら万全なので、在日の外国人や、インバウンドの間でも注目の場所となっています。
タウンさんは、米軍に勤めている頃、東日本大震災の復興支援にも尽力されていたそうで、長くこの国に関わってきたからこそ、日本の良さをたくさん知っていて、ついには晩年も心に決めたこの場所に住むことを選んだそうです。自分たちが引退した後も店が長く続けられるようにと、信頼できる「スタッフ」を「仲間」に迎えたのだと話します。
都会の喧騒を忘れ、自然の中で癒される至福のひととき。そして日本と家族を愛するご夫妻と、スタッフの心の込もったおもてなしを味わいに。ぜひ「Rose Town Tea Garden(ローズタウンティーガーデン)」へ足を伸ばして「プチ贅沢」をしてみませんか。
★
グルメライター 中村あきこ
グルメライター/日本とフランスの料理学校でフランス料理を学び、帰国後、都内フレンチレストランでサーヴィスに従事。マネージャーやウエディングプランナーを経験。また、料理とワインのマリアージュの素晴らしさに心が奪われた事をきっかけに、JSA認定ソムリエ、シニアソムリエを取得。お店に立つ側と食べる側、両方の視点から感じたものを、素直な言葉で綴り、そのホスピタリティを伝えている。現在は知人の店でヘルプシェフとしてキッチンに立つことも。二児の母。長男の育児中の食の悩みから、幼児食インストラクターを取得。親子で楽しく囲める食卓も日々研究中。
施設名 | Rose Town Tea Garden(ローズタウンティーガーデン) |
---|---|
住所 | 東京都青梅市二俣尾1-3-1 |
TEL | 080-4187-1727 |
営業時間 | 11:00~17:00 |
定休日 | 日・月曜日 |
公式サイト | https://rosetownjapan.com/menu |
備考 | インスタグラム:https://www.instagram.com/rosetownjapan ※予約しておくとスムーズです |
※最新の情報は公式サイトをご確認ください。